おとり物件とは
おとり物件とは、実際には契約できない、または最初から契約させる意思がないにもかかわらず、問い合わせを集める目的で掲載されている物件のことです。「釣り物件」とも呼ばれます。
具体的には、すでに成約済みの物件・募集が終了している物件・オーナーが申込受付を止めている物件などが該当します。これらがあたかも今も借りられるかのように掲載され続けている点が問題です。
おとり物件に引っかかると、借主にとってさまざまな不利益が生じます。詳しくは後述しますが、時間・費用・判断機会の損失が重なり、場合によっては本来希望していなかった物件で契約してしまうことにもつながります。
マチラボの独自調査では、名古屋エリアの情報サイト掲載物件のうち約20%前後が「募集終了から1週間以上掲載され続けている物件」に該当していました。決して少ない割合ではありません。
おとり物件に引っかかるとどうなるか
おとり物件は、ただ「損をする」というだけでなく、部屋探し全体のプロセスに連鎖的なダメージをもたらします。
時間が無駄になる
おとり物件への問い合わせから来店まで、段取りを整えるだけでも数時間から半日程度かかります。仕事の合間に時間をやりくりして来店したにもかかわらず、目当ての物件が「ちょうど決まってしまいました」と告げられれば、そのすべてが無駄になります。
さらに問題なのは、その間に本当に借りられた物件を見逃してしまうことです。賃貸市場では人気物件ほど申込が早く入ります。おとり物件に時間を取られている間に、条件の合う物件に他の申込者が先を越してしまうケースもあります。
交通費・移動コストが無駄になる
来店のために交通費や駐車場代が発生している場合、それもすべて無駄な出費となります。遠方から来店した場合はその負担がさらに大きくなります。繁忙期など部屋探しが長引く時期に複数回このような経験をすると、出費の積み重ねは決して小さくありません。
意図しない物件で契約してしまうリスクがある
おとり物件の最も深刻な被害は、本来希望していた物件とは異なる物件を契約させられてしまうことです。来店した後に「その物件は決まりましたが、条件が近い別の物件があります」と代替物件を提案されると、せっかく来店した手前、そのまま契約に流れてしまいやすい心理状態になります。
「今日中に申し込まないと埋まります」などと言われると、十分に他の物件と比較しないまま意思決定してしまう可能性があります。入居後に「もっとよく探せばよかった」と後悔しても、賃貸契約は一度結ぶと簡単には変更できません。
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おとり物件は違法?
おとり物件は単なる「マナー違反」ではなく、法律上も明確に問題となる行為です。関係する主な法律・規約は以下の通りです。
関係する主な法律・規約
- 宅地建物取引業法:取引の相手方に誤解を与える表示や事実と異なる広告を禁止。国土交通省のガイドラインでも「取引する意思のない物件の広告掲載」は不当な表示に該当すると明示されています。
- 景品表示法:実際の内容よりも著しく有利であると誤認させる「有利誤認表示」を禁止。おとり物件はその条件で借りられると誤解させる点で該当する可能性があります。
- 不動産公正取引協議会の広告規約:成約済み・募集終了・取引する意思のない物件の広告掲載を明確に禁止。
これらに違反しても即座に刑事罰が科されるケースは多くありませんが、行政指導・業務停止処分の対象となる可能性があります。悪質性が高いと判断された場合や繰り返し行われた場合は、より重い処分につながることもあります。
「更新が遅れただけ」「たまたま直前で決まった」という説明が常に通用するわけではなく、結果として借主に誤解を与える広告になっていれば、法的に問題と判断される可能性があります。
おとり物件の手口
1. 情報サイト上での手口(最も一般的)
SUUMO・アットホームなどの情報サイトに、すでに募集が終了している物件を削除せず掲載し続ける手法です。問い合わせが入った際に「まだ募集中です」と返答して来店を促し、来店後に「ちょうど別の方で決まってしまいました」と告げて別物件に誘導します。
一見すると単なる管理ミスや更新漏れのようにも見えるため、意図的かどうかの判断が難しく、指摘された際に「消し忘れていた」と弁解しやすい点が特徴です。これが現在も主流の手法として使われている理由のひとつです。
なお、管理会社から情報提供に遅れがある場合など、悪意なく募集終了物件が一時的に掲載されてしまうケースも実務上はあります。すべての掲載終了物件がおとり物件とは限りません。ただし、同じ不動産会社で同様の対応が繰り返される場合は偶然とは言い切れません。
また最近では、来店を強く促さずに「すでに募集終了でした」と丁寧に伝えたうえで別物件を提案する手口も増えています。一見誠実な対応に見えるため、以前より分かりにくくなっています。本当に直前で決まった物件であれば速やかに掲載が削除されるはずなので、翌日以降も同じ物件が掲載され続けている場合はおとり物件の可能性があります。
2. 不動産会社サイトでの手口
不動産会社の自社サイトで、建物名・外観写真・立地情報のみを掲載し、具体的な募集室数・賃料・敷礼などの条件を一切記載しない手法です。「詳細はお問い合わせください」だけが書かれており、閲覧者は実際に募集されている部屋が存在するかどうかを判断できません。
問い合わせると「現在募集中です」と来店を促し、実際に来店すると「今は空きがありません」「ちょうど決まりました」と説明されて別物件に誘導されます。これは不動産の表示に関する公正競争規約が禁止する「取引内容について誤認されるおそれのある表示」に該当する可能性があります。具体的な募集部屋や条件が明記されていないサイトへの問い合わせは控えることが賢明です。
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3. なぜおとり物件はなくならないのか
名古屋エリアではほとんどの賃貸物件が複数の不動産会社から取り扱い可能なため、1つの物件に30社以上が同時に掲載しているケースも珍しくありません。情報サイト上では掲載内容の充実度やオプションによって検索上位への表示頻度が変わるため、問い合わせを獲得する競争が非常に激しい状況です。
募集が終了した物件は、条件が良かったからこそ早期に成約した物件であることがほとんどです。その物件を削除しないまま残せば、競合する他社の掲載が減り、検索上位に表示されやすくなります。悪質な業者はこの仕組みを利用して、あえて成約済み物件を残すことで問い合わせを集めています。
真面目に情報を更新している不動産会社ほど、こうした競争で不利な立場に置かれてしまいます。おとり物件の問題は借主だけでなく、誠実に営業している会社にも悪影響を及ぼす構造的な問題です。
おとり物件の見分け方・対策
掲載情報だけを見ていては、おとり物件かどうかを判別することはほぼ不可能です。ただし、以下の方法を組み合わせることで、リスクを大きく下げることができます。
- 1
内見を「現地待ち合わせ」で依頼する
最も有効な方法です。おとり物件は実際には紹介できないため、現地での案内ができません。「まずは店舗に来てください」「来店しないと内見できません」と来店を強く促す場合は、その物件が実際には内見できない可能性を疑うべきです。現在ほとんどの不動産会社は現地待ち合わせに対応しています。
- 2
複数の不動産会社に空室状況を確認する
別の不動産会社にも「○○マンションは現在案内可能ですか?」と確認してみましょう。誠実な会社であれば、募集終了の場合はその旨を正直に教えてくれます。1社だけが「まだ募集中」と言い続ける場合は注意が必要です。名古屋市内の物件についてはマチラボへお問い合わせいただければ空室状況をお調べします。
- 3
家賃が相場より極端に安い物件に注意する
おとり物件は問い合わせを集めることが目的のため、相場より明らかに安い家賃設定になっていることがあります。周辺の類似物件と比較して不自然に安い場合は慎重に確認しましょう。
- 4
物件名・住所・条件が明記されているか確認する
物件名や具体的な条件(賃料・敷金・礼金・間取りなど)が記載されておらず、「詳細はお問い合わせください」のみのサイトには注意が必要です。実際に募集されている部屋があるかを利用者が判断できない状態は、おとり物件の温床になりやすい形式です。
- 5
「決まった」と言われた翌日に再度掲載されているか確認する
「直前で決まった」という説明が本当であれば、通常は速やかに掲載が削除されます。翌日以降も同じ物件情報が掲載されたままであれば、おとり物件である可能性が高いと判断できます。
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まとめ
おとり物件は、真剣に部屋を探している方の時間・費用・判断の機会を不当に奪う問題です。法律上も明確に禁止されている行為ですが、現在も一定数存在しているのが現実です。
- 内見を「現地待ち合わせ」で依頼することが最も有効な見分け方
- 複数の不動産会社に空室確認を取ることでリスクを下げられる
- 家賃が極端に安い・物件情報が不明確・来店を強く促す場合は注意
- 「決まった」と言われた物件が翌日も掲載されていたらおとり物件の可能性が高い
正確な情報を丁寧に説明してくれる不動産会社を選ぶことが、結果的に後悔のない住まい選びにつながります。マチラボでは毎日情報を更新し、おとり物件の掲載を行っていません。名古屋市内の物件については、URLや物件名をお送りいただければ現況をお調べします。