重要事項説明とは、契約を締結する前に、宅地建物取引士が物件や契約条件について説明することを法律で義務付けられた手続きです。実施できるのは宅地建物取引士に限られており、無資格の営業担当が行うことは宅建業法違反にあたります。
結論からいえば、重要事項説明はできるだけ早めに終わらせておくほうが、その後の契約スケジュールに余裕が生まれます。この記事では、重要事項説明が必要な理由、重要事項説明書と契約書の違い、実施されるタイミングや所要時間、オンラインでの実施の可否、当日に確認しておきたいポイントを、宅地建物取引士としての実務経験をもとに解説します。

最終更新日:2026年07月03日
重要事項説明とは
重要事項説明とは、宅地建物取引業法第35条に基づき、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が物件の権利関係や契約条件などの重要な事項について、書面を交付したうえで説明することを指します。賃料や契約期間だけでなく、更新料・解約予告期間・原状回復の特約など、契約後にトラブルになりやすい項目もこの中で説明されます。
説明にあたって宅地建物取引士は、相手方から求められなくても宅地建物取引士証を提示しなければならないと定められています。また、重要事項説明書には説明を担当した宅地建物取引士の記名が必要です。これは、説明内容に誤りがないことを宅地建物取引士自身が確認したうえで責任を持つ、という位置づけになっています。
重要事項説明は「契約が成立するまでの間」に行うことが法律上の義務です。契約書に署名・捺印したあとに説明を受けるという順番は、宅建業法違反になります。
なぜ重要事項説明が必要なのか
賃貸物件は、家賃や初期費用だけでなく、退去費用・更新料・短期解約違約金・禁止事項・設備・管理形態・建物の法令上の制限など、契約後にトラブルになりやすい要素が数多くあります。しかも、これらの内容は物件ごとに異なり、募集図面や見積書だけではすべてを把握しきれません。
そのため、契約前の段階で借主にとって不利になりうる条件や注意点をあらかじめ確認できるようにすることが、重要事項説明の目的です。重要事項説明は、不動産会社が形式的に読み上げるだけの手続きではありません。借主が契約前に、費用・設備・禁止事項・退去時の条件などを確認するための重要な機会です。
私の経験上、重要事項説明を「聞くだけの儀式」だと捉えている方ほど、退去時や更新時にトラブルになりやすい傾向があります。逆に、この段階でしっかり確認しておいた方は、契約後の認識違いが少なく済んでいます。
重要事項説明書と契約書の違い
重要事項説明書は、契約前に説明すべき重要事項をまとめた書類です。一方、契約書(賃貸借契約書)は、貸主と借主の間で実際に成立する契約内容を定めた書類です。役割が異なるため、記載されている項目や交付されるタイミングも異なります。
実務上、注意しておきたいのは、重要事項説明書と契約書の内容が食い違っていないか確認することです。件数としては多くありませんが、次のようなズレが実際に起こり得ます。
- 重要事項説明書には更新料ありと記載されているが、契約書には更新料の記載がない
- 見積書には保証会社の月額費用が記載されていないが、重要事項説明書には記載がある
- 募集図面ではペット可となっているが、契約書ではペット不可になっている
- 初期費用の見積もりではクリーニング費用なしとされていたが、契約書では退去時負担ありと記載されている
こうしたズレは、確認不足のまま契約を進めてしまうと、退去時や更新時に「聞いていた話と違う」というトラブルにつながりやすい部分です。契約前には、見積書・重要事項説明書・契約書の3つを照らし合わせ、記載内容が一致しているかを確認することをおすすめします。
重要事項説明はいつ行われるのか
重要事項説明を行うタイミングについて、法律上は「契約締結前」というルールしかなく、具体的な日数までは定められていません。ただし実務上は、入居審査が完了してから契約開始日までの間に行われるのが一般的です。
私の経験上、契約開始日の1週間前後までに重要事項説明を終えておくと、その後の署名・捺印や初期費用の入金といった手続きに余裕を持たせやすくなります。多くの物件では、鍵の引き渡しまでに初期費用の入金や契約書類への署名を完了させる必要があるため、重要事項説明が契約開始日の直前にずれ込むと、他の手続きが一気に詰まってしまうことがあります。
「鍵を渡すタイミングでまとめて説明を受けてはダメなのか」というご質問をいただくことがありますが、ほとんどの物件では契約開始日の前々日までに、入金や契約書類の署名・捺印などの手続きをすべて完了させる必要があります。当社では、余裕を持ったスケジュールを組めるよう、契約開始日の1週間前までには重要事項説明を実施するようにしています。
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重要事項説明にかかる時間
重要事項説明そのものは、15分ほどで完了することも珍しくありません。ただし実際の契約手続きでは、契約書の内容や関連する諸費用についての説明もあわせて行うため、全体としては30分〜1時間程度を見込んでおくとよいでしょう。
物件の内容や特約の量、質問の有無によって所要時間は変わります。法人契約、ペット可物件、定期借家契約など、通常より確認すべき事項が多い契約では、説明にさらに時間がかかることがあります。時間に余裕を持ってスケジュールを調整しておくことをおすすめします。
重要事項説明はオンラインでも完結できる
重要事項説明は、不動産会社への来店なしに、オンラインで完結させることも可能です。テレビ会議システムなどのITを活用した重要事項説明は「IT重説」と呼ばれ、賃貸取引については2017年10月に本格運用が始まりました。一定の要件を満たしたうえで実施すれば、対面による説明と同様に扱われます。
IT重説を利用する場合、説明で使用する重要事項説明書はあらかじめ郵送または電子データで交付されている必要があります。電子契約に対応している物件であれば、重要事項説明書への署名も含めてすべてオンラインで完結しますが、対応していない物件では、説明自体はオンラインで行い、書類は郵送でのやり取りになるケースもあります。
不動産会社によっては、重要事項説明のオンライン対応や電子署名対応ができない場合があります。オンラインでの手続きを希望する場合は、内見や申込みの段階で対応可否を確認しておくことをおすすめします。当社ではオンラインでの重要事項説明・電子署名のいずれにも対応可能です。
電子契約・電子署名の対応可否も事前に確認を
重要事項説明のオンライン化(IT重説)と、契約書類への署名を電子化する電子契約は、混同されやすいものの別の手続きです。IT重説に対応していても、電子契約には対応していない不動産会社もあるため、すべてをオンラインで完結させたい場合は、両方の対応状況を事前に確認しておくと安心です。詳しい流れや違いは、以下の記事で解説しています。
賃貸の電子契約とは?流れ・注意点・IT重説との違いを不動産会社が解説
重要事項説明は宅地建物取引士しか行えない
重要事項説明は宅地建物取引士の独占業務であり、資格を持たない営業担当が行うことはできません。これは宅建業法上、明確に違反となる行為です。
実務のなかでは、資格を持たない担当者が重要事項説明の一部、あるいは全体を進めてしまっているのではないかと感じるケースを耳にすることがあります。契約を急ぐあまり、宅地建物取引士の同席が形だけになっているような場合は注意が必要です。説明を受ける際は、担当者が宅地建物取引士証を提示しているか、実際にその担当者が説明を行っているかを確認しておくと安心です。
重要事項説明義務に違反した場合、宅建業者には指示処分や業務停止処分(1年以内)が科されることがあり、情状が特に重いときは免許取消処分に至ることもあります。実際に都道府県が公表している行政処分の事例には、次のようなものがあります。
- 建物の転貸借契約の媒介において、契約成立までの間に転借人へ重要事項説明書を交付しなかったとして、業務停止15日の処分を受けた事例
- 建物賃借の媒介で作成した重要事項説明書に、水害ハザードマップに関する説明事項の記載が漏れていたとして、業務停止29日間の処分を受けた事例
- 建物賃借の媒介において、契約成立までの間に重要事項説明が行われていなかったとして、指示処分を受けた事例
いずれも、都道府県が公表している監督処分の内容をもとにしたものです。重要事項説明は「説明が形だけになっていないか」「契約成立前に済んでいるか」という基本的な部分が守られているかどうかで、行政処分の対象になるかどうかが分かれます。
重要事項説明で実際に確認しておきたいポイント
重要事項説明は聞き流してしまいがちですが、契約後のトラブルを防ぐためには、次のような項目を意識して聞いておくことをおすすめします。
- 契約期間・更新の条件(自動更新か、更新料はいくらか)
- 解約予告期間(何ヶ月前までに連絡が必要か)
- 原状回復に関する特約の内容(通常の負担範囲と異なる特約がないか)
- 退去時のクリーニング費用など、必要費用の詳細(借主負担かどうか、金額と対象範囲)
- 禁止事項(ペット飼育・楽器演奏・法人契約時の転貸など)
- 設備の故障時の連絡先と対応区分(貸主負担か借主負担か)
- 周辺環境や物件に関する告知事項(心理的瑕疵に関する事項が含まれる場合がある)
特に原状回復の特約やクリーニング費用は、物件ごとに内容が大きく異なる項目です。説明の中で分かりにくい部分があれば、その場で質問し、納得したうえで次の手続きに進むことが大切です。
賃貸のクリーニング費用とは?相場・特約・入居時払いと退去時払いの違いを解説
不動産会社によっては、重要事項説明を早口で読み上げるだけで済ませてしまうケースもあります。私の経験上、説明が丁寧な会社ほど、契約後のトラブルも少ない傾向にあります。分かりにくい説明のまま契約を進めず、その場でしっかり質問することをおすすめします。
重要事項説明の内容と、実際に交わす賃貸借契約書の内容が食い違っているケースもまれにあります。特に金額や特約に関する部分は、説明時の内容と契約書の記載を見比べておくと安心です。
まとめ
- 重要事項説明は宅建業法第35条に基づく法定の説明義務で、契約成立前に行う必要がある
- 賃貸物件は退去費用や特約などトラブルになりやすい要素が多く、契約前に確認する重要な機会となる
- 重要事項説明書と契約書は役割が異なり、内容が食い違っていないか照合することが大切
- 実施できるのは宅地建物取引士のみで、無資格者による説明は宅建業法違反にあたり、実際に行政処分を受けた事例もある
- 契約開始日の1週間前後までに終わらせておくと、その後の手続きに余裕が生まれる
- 2017年10月から賃貸取引のIT重説が本格運用されており、オンラインでも完結できる
- 契約期間・原状回復特約・クリーニング費用・禁止事項などは、その場で質問して納得してから次に進むことが重要
