賃貸の電子契約とは?流れ・注意点・IT重説との違いを不動産会社が解説

最終更新日:2026年05月04日

賃貸借契約はこれまで紙での手続きが一般的でしたが、近年はスマートフォンやパソコンを使ってオンラインで完結できる「電子契約」が広まっています。

「電子契約って本当に安全?」「IT重説とは何が違うの?」「来店しなくても契約できる?」――そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

結論からいえば、2022年の法改正により電子契約は法的に正式に認められており、適切なサービスを利用すれば安全に手続きを進めることができます。ただし、流れや注意点を理解しておかないとトラブルにつながるケースもあります。

この記事では、賃貸借契約における電子契約の仕組み・流れ・メリット・注意点、そしてIT重説との違いを、不動産仲介の実務経験をもとにわかりやすく解説します。これから電子契約での手続きを予定している方は、ぜひ契約前に参考にしてください。

賃貸の電子契約イメージ

賃貸の電子契約とは何か

賃貸借契約の電子契約とは、紙の契約書を交わすのではなく、インターネット上で契約内容を確認し、電子署名によって契約を締結する方法です。パソコンやスマートフォンがあれば、契約手続きをオンラインで完結させることができます。

そもそも電子契約とは

電子契約とは、紙の契約書を使わずに電子データ上で契約を締結する仕組みです。具体的には、①契約書の内容をオンラインで確認、②電子的に同意・署名、③契約データとして保存、という流れで手続きが進みます。

すでに生命保険や携帯電話の契約、クレジットカードの申し込み、サブスクリプションサービスなどでは電子契約が一般的になっています。

不動産で電子契約ができなかった理由

他の分野では以前から電子契約が普及していた一方、不動産の賃貸借契約では長らく紙での契約が原則とされていました。その理由は、宅地建物取引業法により、重要事項説明書や賃貸借契約書などの書面交付が義務付けられていたためです。特に重要事項説明は、宅地建物取引士が対面で書面を使って説明することが前提とされており、電子データだけでの完結は認められていませんでした。

電子契約が解禁された経緯

国のデジタル化推進の流れを受け、不動産分野でも制度の見直しが進みました。まずITを活用した重要事項説明(IT重説)が導入され、オンラインでの説明が可能になりました。さらに2022年の法改正により、賃貸借契約書や重要事項説明書の電子データでの交付が正式に認められ、電子契約が本格的に利用できるようになりました。

新型コロナウイルスの影響も大きな転機となり、非対面で契約を完結できる仕組みの整備が急速に進みました。現在では重要事項説明・契約書の確認・署名まで、すべてオンラインで完結できる環境が整っています。

ポイント

電子契約は2022年の法改正で正式に認められた手続きです。紙の契約書と同じ法的効力があり、適切なサービスを利用すれば安全に手続きを進めることができます。

電子契約のメリット

契約手続きが大幅にスピードアップする

従来の紙の契約では、管理会社が書類を作成→仲介会社へ送付→署名・捺印→返送→貸主へ送付、という複数の工程が発生するため、契約完了まで数日〜1週間程度かかるケースも珍しくありません。電子契約では書類のやり取りがすべてオンラインで完結するため、早ければ当日中、遅くても数日以内に契約を完了できます。

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来店・郵送の手間がなくなる

電子契約であれば、スマートフォンやパソコンから手続きが完結するため、来店や郵送の必要がありません。遠方からの引越しや、仕事で時間が取れない方にとっては特に大きなメリットです。管理会社や不動産会社にとっても、印刷・発送の手間や郵送コストの削減につながります。

書類の保管・検索が簡単になる

紙の契約書は保管場所の問題や紛失リスクがありますが、電子契約ではPDFデータやクラウド上に保存されるため、スマートフォンやパソコンからいつでも確認できます。引越し時に紛失したり、必要なときに見つからなかったりといったトラブルを防ぐことができます。

修正・訂正の対応がスムーズ

紙の契約では訂正印や再郵送が必要になりますが、電子契約ではデータ上での修正が可能なため、内容を訂正してもすぐに手続きを再開できます。契約全体の遅れを防ぎ、スピーディーに対応できる点も電子契約のメリットです。

電子契約のデメリット・注意点

注意

電子契約は便利な仕組みですが、対応物件がまだ限られていること、認証メールが届かないトラブルがあることなど、事前に把握しておくべき注意点があります。

対応できる物件はまだ約2割程度

電子契約は普及が進んでいますが、2026年現在の実務感覚では、全体の契約のうち電子契約で完結するケースはおよそ2割程度にとどまっています。希望しても物件や管理会社の対応状況によっては、紙での契約になる場合もあります。

スマートフォン・インターネット環境が必須

電子契約はオンライン上で手続きを行うため、インターネット環境とスマートフォンまたはパソコンが必要です。端末を持っていない方や操作に不安がある方は、従来どおり紙での契約を選択する必要があります。

認証メールが届かないことがある

実務上、電子契約で最も多いトラブルの一つが「認証メールが届かない」ケースです。迷惑メールフィルターやキャリアメール(docomo・au・softbank)の設定により、認証用のURLやコードが受信できないことがあります。事前に以下を確認しておくことを強くお勧めします。

  • 迷惑メールフォルダを確認する
  • 受信許可設定を変更する
  • Gmailなどフリーメールのアドレスをサブとして用意する

期限切れやシステムトラブルに注意

電子契約の手続きには有効期限が設定されていることが多く、気づかないまま期限切れになると再送手続きが必要になります。また、システム障害やインターネット接続の不具合によって一時的に手続きが進められないこともあります。締切直前に慌てることがないよう、早めに手続きを進める習慣が重要です。

電子契約の流れ

申込審査通過後、電子契約サービスから借主宛に認証メール(またはSMS)が届きます。この認証を完了することで、契約書類の確認・署名手続きに進むことができます。なお、重要事項説明書が電子契約に含まれているかどうかによって、手続きの流れが多少異なります。

重要事項説明書も電子契約に含まれている場合

この場合、重要事項説明書と賃貸借契約書がまとめてオンライン上で送付され、すべての手続きをオンラインで完結させることができます。

  1. 審査完了:入居申込後、審査が完了し契約に進める状態になります。
  2. 認証メールの送信:電子契約サービスから契約手続き用のURLがメール・SMSで届きます。
  3. IT重説の実施:オンライン通話(ZoomやLINEなど)または来店で、宅地建物取引士から重要事項説明を受けます。
  4. 電子署名・同意:重要事項説明書・賃貸借契約書・関連書類を画面上で確認し、電子署名・同意を行います。
  5. 貸主側の署名:借主の手続き完了後、貸主側でも電子署名・承認が行われます。
  6. 契約完了・書類保存:すべての署名が完了すると契約成立となり、契約書類はデータでダウンロード・保存できます。

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重要事項説明書が電子契約に含まれていない場合

管理会社のシステムに重要事項説明書が含まれていない場合、仲介する不動産会社の対応状況によって手続きが異なります。

  • 電子署名に対応している場合:重要事項説明もオンラインで実施し、電子署名で完結。契約全体を非対面で完了できます。
  • 電子署名に対応していない場合:IT重説はオンラインで実施するものの、重要事項説明書は郵送または来店で交付される形になります。

マチラボでは重要事項説明書の電子署名にも対応しているため、電子契約対応物件であれば、すべての手続きをオンラインで完結させることが可能です。

電子契約とIT重説の違い

電子契約とIT重説は混同されやすいですが、役割がまったく異なる別の手続きです。

IT重説とは

IT重説とは、重要事項説明をZoomやLINE、FaceTimeなどのオンライン通話を使って行う方法です。従来は対面での実施が義務付けられていましたが、現在はオンラインでも実施できます。実施するのは仲介する不動産会社の宅地建物取引士が一般的ですが、物件によっては管理会社や貸主側が行う場合もあります。

説明で使用する書類は、事前に郵送または電子データで交付されますが、実務上は現在でも紙での交付が多い状況です。

電子契約との違い

IT重説は「重要事項の説明方法」であり、電子契約は「契約の締結方法」です。この2つは連続した手続きではありますが、法律上は別の工程として扱われます。セットで使われることが多いですが、必ずしも両方が電子化されるわけではなく、「IT重説はオンラインで実施し、契約は紙で行う」といったケースも存在します。

ポイント

IT重説=「説明」、電子契約=「契約締結」と役割が分かれています。どちらもオンラインで実施できますが、別の手続きです。管理会社や仲介会社の対応状況によって、紙と電子が混在するケースもあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 電子契約は法的に問題ありませんか?

A. 問題ありません。2022年の法改正により、賃貸借契約書や重要事項説明書の電子交付・電子契約が正式に認められています。電子署名によって契約の有効性も担保されており、紙の契約と同じ法的効力があります。

Q. 電子契約は安全ですか?

A. 適切な電子契約サービスを利用していれば、安全性は確保されています。本人確認・電子署名・データ改ざん防止などの仕組みが導入されており、紙の契約と同様の効力があります。ただし、メールの管理や端末のセキュリティには引き続き注意が必要です。

Q. 電子契約で印鑑は必要ですか?

A. 物理的な印鑑は不要です。電子署名や電子印鑑によってオンライン上で完結します。電子印鑑が必要なケースでも、多くのサービスではシステム内で作成・設定できるため、事前に用意する必要はありません。

Q. 紙の契約書はもらえますか?

A. 希望すればプリントアウトしてもらうことは可能です。ただし、電子契約では電子データ(PDFなど)が正式な原本として扱われます。紙はその写し・控えという位置づけになります。

Q. 電子契約に対応しているかどうかは事前に確認できますか?

A. 対応しているかどうかは、物件ごと・管理会社ごとに異なります。内見・申込の段階で担当の不動産会社に確認するのが確実です。電子契約を希望する場合は、早めに意向を伝えておくとスムーズです。

まとめ

  • 電子契約は2022年の法改正で正式に認められた、法的に有効な契約方法
  • 郵送・来店が不要になり、契約スピードが大幅に向上する
  • 2026年現在、対応物件は全体の約2割程度でまだ限られている
  • 認証メールが届かないトラブルが最も多いため、事前のメール設定確認が重要
  • IT重説は「説明」、電子契約は「契約締結」と役割が異なる別の手続き
  • 管理会社・仲介会社の対応状況によって、紙と電子が混在するケースもある

栗田伸裕のプロフィール写真
執筆者
栗田 伸裕

株式会社マチラボ 代表取締役

1級FP技能士
宅地建物取引士
マンション管理士
賃貸不動産経営管理士

これまで1,000件以上のお部屋探しをサポートしてきた賃貸仲介の実務経験をもとに、賃貸契約や初期費用、退去費用など賃貸に関する情報をわかりやすく解説しています。1級ファイナンシャルプランナーおよび宅地建物取引士としての知識を活かし、家賃だけでなく初期費用や更新費用、退去費用なども含めた「総合的な住居コスト」を意識したお部屋探しのアドバイスを行っています。また、名古屋出身で名古屋の賃貸市場やエリア特性にも精通しており、地域事情を踏まえた現実的で正確な情報提供を心がけています。