賃貸のクリーニング費用とは?相場・特約・入居時払いと退去時払いの違いを解説

賃貸物件の退去後には、室内を専門業者が清掃する「クリーニング費用」がかかります。国土交通省のガイドライン上、通常の使用で生じた汚れの清掃費用は、本来は貸主負担が原則です。ただし、契約書に「クリーニング費用は借主負担」とする特約が付いていれば借主の負担となり、実際の賃貸契約では特約付きがほとんどです。

この記事では、クリーニング費用の法的な位置づけと特約の有効性、広さ別の相場、そして「入居時払い」と「退去時払い」の違いまで、1,000件以上のお部屋探しをサポートしてきた経験をもとに整理します。

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最終更新日:2026年6月28日

クリーニング費用とは

クリーニング費用とは、入居者が退去したあとに、次の入居者へ引き渡すため専門業者が室内を清掃する費用です。賃貸借契約書では「ハウスクリーニング費用」や「室内清掃費」と書かれていることもあります。

清掃の対象は部屋全体に及びます。代表的なのは次のような箇所です。

  • 床・フローリングのワックスがけ
  • キッチン、レンジフード、換気扇の油汚れ
  • 浴室、洗面所、トイレなどの水回り
  • 窓ガラス、サッシ、網戸
  • 壁・天井のホコリやヤニの拭き取り

専門業者が入るとはいえ、清掃は完ぺきではありません。長年の使用でついた水アカや黄ばみ、細かなキズ、設備の経年的な劣化などは完全には取りきれず、ある程度の生活感が残ることもあります。「クリーニング費用を払えば新品同様になる」というものではない点は、あらかじめ理解しておきたいところです。

なお、クリーニングは原状回復の一部ではありますが、壁紙(クロス)の張り替えや床の補修といった工事とは区別して扱われるのが一般的です。クリーニング費用はあくまで「清掃」にかかる費用であり、借主の故意・過失による破損の修繕費とは別に計算されます。

ポイント
  • 通常の使用で生じた汚れの清掃費用は、本来は貸主負担が原則
  • 「クリーニング費用は借主負担」とする特約があれば借主負担になる
  • 実務上は、この特約が付いた契約がほとんど

クリーニング費用の法的な位置づけと特約の有効性

クリーニング費用を誰が負担するかは、最終的に契約書と重要事項説明書の記載で決まります。まずは原則となる考え方と、特約が有効と認められる条件を押さえておきます。

通常損耗・経年劣化は原則として貸主負担

令和2年4月施行の改正民法では、通常の使用によって生じた損耗(通常損耗)や経年劣化について、借主は原状回復義務を負わないことが明文化されました(民法第621条)。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、通常損耗分の清掃費用は貸主負担が原則とされています。借主が日常の清掃を怠ったために生じた特別な汚れなどは借主負担になりますが、普通に住んで生じた範囲の汚れの清掃は、本来は貸主が負担するという考え方です。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

特約があれば借主負担になる

賃貸借契約は当事者の合意に基づくため、特約でクリーニング費用を借主負担と定めること自体は可能です。実際の賃貸契約では、退去時の汚れの有無を巡る紛争を避ける目的で、この特約が設けられているケースがほとんどです。

重要なのは、契約書や重要事項説明書にどのように記載されているかです。国土交通省も、契約前に原状回復の範囲や費用負担、クリーニング費用の負担特約について確認するよう案内しています。

注意

クリーニング費用の負担条件は、契約後に変更するのは困難です。借主負担となる費用の金額や範囲は、契約前に重要事項説明書と契約書で必ず確認してください。

クリーニング特約が有効と認められる条件

国土交通省はガイドラインのQ&Aで、クリーニング特約の有効・無効を次の観点から判断するとしています。

  • 借主が負担すべき内容・範囲が示されているか
  • 本来は借主負担とならない通常損耗分まで負担させる趣旨と、その具体的な範囲が、契約書に明記または口頭で説明されているか
  • 費用として妥当か

逆に、単に「クリーニング費用は借主が負担する」とだけ定めた特約は、通常損耗まで負担させる趣旨が明確でないとして、有効と認められなかった判例もあります(東京地裁判決 平成21年1月16日)。契約書にクリーニング費用の金額が明記されているかどうかは、トラブルを避けるうえで確認しておきたいポイントです。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のQ&A

クリーニング費用の相場

クリーニング費用は部屋の広さで大きく変わります。広くなるほど清掃する面積や箇所が増えるため、費用も上がっていきます。単身向けのワンルームと、部屋数の多いファミリー向けとでは、金額に数万円単位の差が出ることも珍しくありません。

単身向け(20㎡前後)
30,000〜50,000円
広い間取り・ファミリー向け
広さに応じて上がる

上記はあくまで目安です。同じ広さでも、設定金額は管理会社や物件によってかなり幅があります。地域や築年数、清掃に含まれる範囲(エアコンや水回りを含むかどうかなど)によっても変わるため、ひとつの相場だけで判断するのは禁物です。

大切なのは、契約前にクリーニング費用がいくらで、どこまでの清掃が含まれるのかを確認しておくことです。提示された金額が相場から大きく外れて高い場合は、内訳の説明を求めるとよいでしょう。

ポイント

クリーニング費用は物件ごとに金額の幅が大きいため、初期費用や退去費用の見積もりの段階で、金額と清掃範囲を事前に確認しておくことが重要です。

エアコンクリーニングが別途必要なケース

通常のクリーニング費用にはエアコン内部の分解洗浄まで含まれないことがあり、その場合は別料金として加算されます。エアコンクリーニングの相場は1台あたりおおむね次のとおりです。

通常タイプ(1台)
12,000〜20,000円
お掃除機能付き(1台)
30,000〜40,000円

お掃除機能付きエアコンは内部構造が複雑で、分解や組み立てに手間がかかるため、通常タイプの2倍前後まで費用が上がることがあります。エアコンが複数台ある物件では台数分の費用がかかるため、契約前にエアコンクリーニングが借主負担に含まれるかどうかも確認しておくと安心です。

入居時払いと退去時払いの違い

クリーニング費用の支払いタイミングには、入居時に払うパターンと退去時に払うパターンがあります。どちらになるかは契約内容によって決まるため、契約前に確認しておきましょう。

入居時払い
契約時の初期費用にクリーニング費用が含まれ、入居前にまとめて支払います。入居時に支払った場合は、退去時に改めて支払う必要がない物件がほとんどです。退去時の精算がシンプルになる一方、初期費用の総額は増えるため、契約前の見積もりで金額を把握しておくことが大切です。
退去時払い
退去後に請求されます。あらかじめ預けた敷金から差し引かれる形になることが多くなります。敷金がない物件の場合は、差し引く原資がないため、退去時に別途支払う必要があります。

敷金の有無と、クリーニング費用がどちらのタイミングで請求されるかは、セットで確認しておくと安心です。

どちらのパターンでも、特約で借主負担と定められている以上、居住期間の長短は基本的に関係しません。数ヶ月の入居でも、長く住んだ場合でも、特約があれば原則として負担することになります。

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クリーニング費用が借主負担でない物件の注意点

「クリーニング費用は貸主負担」とうたう物件もありますが、その分を別の名目で実質的に負担しているケースがほとんどです。

具体的には、礼金が設定されていたり、敷金・保証金の一部が返還されない「償却(敷引き)」が定められていたりします。クリーニング費用の名目がないだけで、初期費用や退去時の精算で実質的に負担している場合がある、と考えておくと判断を誤りにくくなります。

注意

「クリーニング費用なし」という表示だけで初期費用の総額が安いとは限りません。礼金や敷金・保証金の償却を含めた総額で物件を比較することが大切です。


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クリーニング費用は交渉できるのか

私の経験上、クリーニング費用の交渉が通ることは多くありません。特約として金額があらかじめ定型化されており、貸主や管理会社も個別の値引きには応じにくいためです。クリーニング費用は次の入居者への引き渡し準備として必ず発生する費用であり、入居者ごとに金額を変えると管理が煩雑になることも、交渉が通りにくい背景にあります。

一方で、提示された金額が相場から大きく外れて高い場合や、内訳がはっきりしない場合には、内訳の説明を求める余地はあります。金額そのものの値下げを求めるより、その金額が清掃範囲に対して妥当かどうかを確認する姿勢が現実的です。どうしても費用を抑えたい場合は、契約を結ぶ前の段階で、クリーニング費用を含めた初期費用の総額が安い物件を選ぶほうが効果的です。

クリーニング費用を払っても追加請求されるケース

クリーニング費用を負担していても、日常の使用の範囲を超える汚損があると、別途「特別清掃費用」などが請求されることがあります。これは善管注意義務違反に該当する部分として、通常のクリーニングとは別に借主負担となり得るためです。代表的なのは次のようなケースです。

  • 喫煙によるヤニ汚れや臭い:壁紙や天井に染みついたヤニは通常清掃では落ちず、消臭やクロスの張り替えが必要になることがあります。
  • ペット飼育による臭い・キズ:床や柱のひっかきキズ、染みついた臭いは特別な対応が必要です。ペット可物件でも、こうした損傷は別途負担になることがあります。
  • 結露を放置したことによるカビ:換気を怠って広がった壁や窓まわりのカビは、通常損耗とは区別され、借主負担になりやすい汚損です。
  • キッチンの頑固な油汚れ:長期間放置して固着した油汚れは、通常のクリーニングの範囲を超えると判断されることがあります。
  • ゴミの放置による害虫や悪臭:退去時に大量のゴミを残した場合などは、撤去費用や害虫駆除費用が加算されることがあります。

これらは通常の清掃では落としきれない、あるいは通常の使用とは言えない汚損です。日々の換気や簡単な掃除を心がけるだけでも、こうした追加負担はある程度防げます。心当たりがある場合は、退去時に追加費用が発生する可能性を見込んでおくとよいでしょう。

注意

クリーニング費用を払っていれば、室内のどんな汚れもカバーされるわけではありません。喫煙・ペット・カビなど日常の範囲を超える汚損は、別途の費用負担につながります。

契約前に確認したいクリーニング費用のチェックポイント

クリーニング費用をめぐるトラブルの多くは、契約時の確認不足から生じます。契約を結ぶ前に、次の点を重要事項説明書と契約書で確認しておくと安心です。

  • クリーニング費用が借主負担となっているか、金額はいくらか
  • 清掃の対象範囲(エアコンや水回りを含むか)
  • 入居時払いか退去時払いか
  • 退去時払いの場合、敷金の有無と、敷金から差し引かれるのか別途支払うのか
  • 礼金や敷金・保証金の償却など、別の名目での負担がないか

これらは契約後に変更するのが難しい項目です。不明な点があれば、契約前に不動産会社へ遠慮なく確認しましょう。納得したうえで契約することが、退去時のトラブルを防ぐ一番の近道です。

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まとめ

  • 通常損耗分のクリーニング費用は本来貸主負担が原則だが、特約があれば借主負担となり、実務では特約付きがほとんど
  • 誰が負担するかは契約書・重要事項説明書の記載で決まるため、契約前に必ず確認する
  • 特約の有効性は、負担範囲の明示・通常損耗を負担させる趣旨の説明・費用の妥当性から判断される
  • 相場は単身20㎡前後で30,000〜50,000円、エアコンは1台12,000〜20,000円(お掃除機能付きは30,000〜40,000円)が目安
  • 入居時払いなら退去時の支払いが不要な物件が多く、退去時払いは敷金から差し引かれることが多い(敷金がなければ別途支払う)
  • 喫煙・ペット・カビなど日常を超える汚損は、特別清掃費用が別途かかることがある
  • 金額・清掃範囲・支払いタイミングは契約後に変更しにくいため、契約前に確認しておく

よくある質問

2〜3ヶ月の短期入居でもクリーニング費用はかかりますか?
特約でクリーニング費用が借主負担と定められている場合、居住期間に関係なくかかります。数ヶ月の入居でも、10年住んだ場合でも、特約があれば原則として負担することになります。
自分で念入りに掃除して退去すれば、クリーニング費用は払わずに済みますか?
払わずに済むことにはなりません。クリーニングは管理会社が手配した業者による清掃を前提としているため、入居者自身が清掃したり、自分で業者を手配して清掃したりしても、契約書で定められたクリーニング費用は支払う必要があります。退去時の部屋がきれいな状態であっても、特約で定められた既定の費用は必要になります。実際に、汚損の有無を問わず専門業者清掃費を借主負担とする特約を有効と判断した判例もあります。
クリーニングの実施報告や明細はもらえますか?
退去時の原状回復費用については、借主は明細を請求し説明を求めることができます(国土交通省のQ&A)。ただし、クリーニング特約に基づく定額負担の場合は、契約に定めがなければ貸主は実施内容を報告する義務を負わないとした判例があります。
クリーニング費用は敷金とは別に支払うのですか?
別の費用です。入居時払いの場合は、初期費用として敷金とは別に支払います。退去時払いの場合は、預けた敷金から差し引かれることが多くなります。
クリーニング費用が不当に高いと感じたら、どこに相談できますか?
まずは契約書と重要事項説明書を確認し、不動産会社や管理会社に内訳の説明を求めましょう。それでも納得できない場合は、消費生活センター(消費者ホットライン188)などの公的な相談窓口を利用する方法があります。退去時の原状回復費用については、明細を請求して説明を求めることができます。

栗田伸裕のプロフィール写真
執筆者
栗田 伸裕

株式会社マチラボ 代表取締役

1級FP技能士
宅地建物取引士
マンション管理士
賃貸不動産経営管理士

これまで1,000件以上のお部屋探しをサポートしてきた賃貸仲介の実務経験をもとに、賃貸契約や初期費用、退去費用など賃貸に関する情報をわかりやすく解説しています。1級ファイナンシャルプランナーおよび宅地建物取引士としての知識を活かし、家賃だけでなく初期費用や更新費用、退去費用なども含めた「総合的な住居コスト」を意識したお部屋探しのアドバイスを行っています。また、名古屋出身で名古屋の賃貸市場やエリア特性にも精通しており、地域事情を踏まえた現実的で正確な情報提供を心がけています。