賃貸の更新案内を受け取って、「更新事務手数料」という見慣れない項目に気づいた方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、更新事務手数料とは契約更新の手続きに対して管理会社・不動産会社へ支払う費用で、貸主に支払う「更新料」とは受取人も性質も異なります。
この記事では、更新事務手数料と更新料の違い、名古屋の実際の物件データをもとにした相場、支払い義務の有無、交渉できるかどうかまで、賃貸仲介の実務目線で解説します。

最終更新日:2026年7月11日
更新事務手数料とは
更新事務手数料とは、賃貸借契約の更新手続きにかかる事務費用として、管理会社や不動産会社に支払う費用のことです。名目上は、更新案内の送付、契約条件の確認、更新契約書の作成、署名・押印手続き、貸主への報告、管理システムの更新登録といった事務作業に対する対価とされています。
- 支払先は管理会社(貸主ではない)
- 貸主に支払う「更新料」とは別の費用
- すべての物件で発生するわけではない
- 金額・有無は物件ごとの契約書によって異なる
更新料との違い
更新事務手数料と更新料は、名前が似ているため混同されがちですが、費用の目的・受取人・消費税の扱いが異なります。
居住用賃貸の更新料は、国税庁の取り扱い上、賃貸借契約の更新に伴う返還不要の金銭として原則非課税とされています。一方、更新事務手数料は管理会社等が提供する事務サービスの対価という性質のため、消費税の扱いが更新料とは異なります。
更新料についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
賃貸の更新料とは?相場・支払い義務・払わないとどうなるかを解説
更新事務手数料の相場
更新事務手数料には全国一律の公的な統計データがなく、金額の設定方法も管理会社によってさまざまです。ここでは、当社が実際に取り扱った名古屋市内の賃貸物件をもとにした調査結果を紹介します。
名古屋市内の賃貸物件のうち、更新事務手数料が必要な物件は全体の約20〜30%でした。金額は20,000円〜賃料の0.5か月分の範囲に収まるケースがほとんどです。
金額の設定方法としては、次のようなパターンが見られます。
- 11,000円・22,000円など定額
- 賃料の0.25か月分
- 賃料の0.5か月分
- 更新料と別立てで請求される方式
- 更新料の一部を管理会社が受け取る方式
更新事務手数料は「物件」ではなく「管理会社」で決まる
私の経験上、更新事務手数料の有無は、個々の物件の条件というよりもその物件を管理している管理会社の料金体系によって決まっている傾向が強いです。更新事務手数料を設定している管理会社は、自社が管理するほぼすべての物件で一律に設定していることが多く、逆に設定していない管理会社は、どの物件でも発生しません。
更新料も更新事務手数料も設定されていない物件では、更新のタイミングで特に何の手続きも発生しないことが一般的です。契約書も従前のものがそのまま有効なままで、書面の取り交わし自体が行われないケースも珍しくありません。一方で、更新事務手数料という名目で請求が来る物件であっても、実際に行われる事務作業の内容は、更新事務手数料がない物件と比べて大きく変わるわけではありません。当社としては、実質的には管理会社の収益に近い性質の費用と捉えており、更新事務手数料が設定されていない物件のほうが、借主にとって望ましい条件だと考えています。
更新事務手数料は払わなければならないのか
更新事務手数料も更新料と同様に、契約書や重要事項説明書に借主負担として明確に記載され、合意している場合に支払い義務が生じます。次の点を確認しましょう。
- 契約書・重要事項説明書に更新事務手数料の記載があるか
- 借主負担として明確に合意されているか
- 更新案内で、契約時になかった費用が突然追加されていないか
- 契約書に記載された金額と、実際の請求額が一致しているか
- 税込・税別のどちらで記載されているか
更新事務は、宅地建物取引業法上の媒介業務(新規契約時の仲介手数料の上限規制の対象となる業務)とは異なる性質の業務とされています。ただし、上限規制の対象外だからといって、管理会社が根拠なく請求してよいわけではありません。契約時に借主との間で、更新事務手数料についての説明と合意があったかどうかが重要になります。「契約書に記載がないので必ず払わなくてよい」と単純に判断するのではなく、契約書・重要事項説明書・更新合意書などに借主負担として合意した根拠があるかを確認することが基本です。
契約書に記載がない場合は断れるか
更新案内で初めて更新事務手数料の請求を受けた場合は、次の順番で確認することをおすすめします。
- 賃貸借契約書を確認する
- 重要事項説明書を確認する
- 入居時の費用一覧・別紙を確認する
- 更新案内に記載された費用名目を確認する
- それでも根拠が分からない場合は、管理会社に契約上の根拠を問い合わせる
契約時に説明も合意もなく、更新のタイミングで突然請求された場合は、請求根拠を確認する必要があります。ただし、更新手続きを借主側から依頼した経緯や、過去の更新時の支払い状況などによって判断が変わる可能性もあるため、「記載がなければ絶対に無効」とまでは言い切れない点にも注意してください。
更新料・更新事務手数料、両方請求されることはあるか
更新料と更新事務手数料が両方設定されている物件も実際にあります。「両方請求された=二重取りで違法」とは限りません。目的と支払先が異なり、契約書にそれぞれの記載と合意があれば、両方が発生すること自体は問題ありません。
ただし、次の点は確認しておくと安心です。
- 更新料の受取人(貸主)
- 更新事務手数料の受取人(管理会社)
- それぞれの費用の目的が契約書に明記されているか
- 更新料の中に、事務手数料に相当する費用が含まれていないか
更新料と更新事務手数料は、性質を区分して説明を受けないと、借主側からは「二重請求されている」ように見えやすい費用です。見積書や更新案内で、どちらの費用がどちらの受取人へ支払われるのかを確認するようにしてください。
更新料なしでも更新事務手数料はかかるか
結論として、「更新料なし」と「更新時の費用が一切かからない」は同じではありません。更新料が設定されていない物件でも、次のような費用が発生する場合があります。
- 更新事務手数料
- 保証会社の更新保証料
- 火災保険(住宅総合保険)の更新料
- 24時間サポートなどの更新料
- 鍵や登録情報の変更費用
更新時に発生しうる費用の全体像や、更新料自体の詳しい解説は、以下の記事でまとめて解説しています。
賃貸契約に必要な家賃保証会社に関する費用|種類や相場などについての詳細説明
賃貸の24時間サポートは必須?断れるケースと費用、加入前の注意点を解説
更新事務手数料は交渉できるか
更新事務手数料は、管理会社があらかじめ社内規定として一律に設定しているケースが多く、個別の交渉は難しいのが実情です。特に大手の管理会社では、更新事務手数料が料金体系として組み込まれており、入居者ごとの対応は行っていないことがほとんどです。
- 管理会社の社内規定で一律の場合は、交渉は難しい
- 貸主が直接管理している物件では、そもそも手数料自体が設定されていないこともある
- 契約前であれば、他社の条件と比較・確認ができる
- 更新直前の交渉は通りにくい
- 契約書と実際の請求額が異なる場合は、交渉ではなく訂正を求める
「長く住んでいるから安くしてほしい」という交渉よりも、契約書に記載された根拠と請求額が一致しているかを確認することを優先してください。
更新事務手数料を払わないとどうなるか
更新事務手数料を支払わなかった場合、更新料と同様に、まずは管理会社から支払いの督促が行われます。それでも支払いが行われない場合には、遅延損害金が発生したり、更新手続きが完了しないまま契約関係が不安定になったりするリスクが段階的に高まります。
支払いが難しい場合に放置してしまうと、長期的には契約上のトラブルに発展する可能性があります。「払わなければ即退去」というわけではありませんが、支払いが困難な場合は、放置せず早めに管理会社へ相談することをおすすめします。
よくある質問
まとめ
- 更新事務手数料は管理会社・不動産会社へ支払う費用で、貸主へ支払う更新料とは受取人が異なる
- マチラボ調査では、名古屋の賃貸物件の約20〜30%に更新事務手数料が設定されている
- 金額は20,000円〜賃料の0.5か月分が中心的な設定範囲
- 有無は物件そのものより、管理している管理会社の料金体系によって決まっている傾向が強い
- 支払い義務は、契約書・重要事項説明書での借主負担の合意があるかどうかで判断する
- 更新料と両方請求されることもあるが、目的と受取人が異なれば直ちに違法ではない
- 更新料なしの物件でも、更新事務手数料や保証会社の更新保証料などが発生する場合がある
- 交渉は難しいケースが多いため、まずは契約書と請求額の一致を確認することが優先
