
更新日:2026年5月
賃貸物件を退去する際には、事前に「退去予告」を行う必要があります。「退去の連絡は何日前にすればいいのか」「1ヶ月前とは具体的にいつなのか」「期限を過ぎたらどうなるのか」など、退去のルールをよく分からないまま進めてしまうと、余分な家賃が発生するトラブルにつながることがあります。
この記事では、退去予告の仕組み・1ヶ月前の正確な数え方・期限を過ぎた場合の対応・日割りの有無・二重家賃を防ぐ方法・退去後の手続きなどについて、不動産仲介の実務の視点からわかりやすく解説します。
退去予告とは
退去予告とは、現在借りている賃貸物件の契約を解約し、退去する意思を貸主または管理会社に事前に通知する手続きのことです。賃貸借契約では、解約を希望する日の一定期間前までに通知する義務が定められており、この期間を「退去予告期間」(または解約予告期間)と呼びます。
退去予告は単なる連絡ではなく、契約上の権利義務に直接影響する重要な手続きです。多くの契約では「通知が到達した日」を起算日として予告期間がカウントされます。手続きのタイミングを間違えると、希望する日程で解約できず家賃が発生し続けることがあります。
引越しが決まったら、まず手元の「賃貸借契約書」を確認してください。解約・解除の条項に退去予告期間(1ヶ月前・2ヶ月前など)と、退去月の家賃が日割りか月割りかが記載されています。
退去予告はいつまでにすればいいか
退去予告の期限は物件によって異なります。一般的には「1ヶ月前」が最多ですが、「2ヶ月前」や「30日前」と指定されている場合もあります。
| 予告期間 | 日割りの有無 | 入居者への影響 |
|---|---|---|
| 1ヶ月前・日割りあり | あり | 最も一般的。無駄な家賃が発生しにくい |
| 1ヶ月前・日割りなし(月割り) | なし | 月末退去でないと1ヶ月分まるごと発生 |
| 2ヶ月前・日割りあり | あり | 早めに予告しないと二重家賃が長引く |
| 2ヶ月前・日割りなし(月割り) | なし | 最も負担が大きい。月末に合わせた退去が重要 |
月割りの契約では、月の途中で退去しても退去月の家賃が1か月分まるごと発生します。例えば4月10日に退去しても4月末までの家賃が必要になるため、月末に合わせた引越しが重要になります。
どちらのパターンかは契約書の「解約条項」または「特約事項」に記載されています。特約事項は見落としやすいため、必ず最後まで確認してください。
「1ヶ月前」の正確な数え方
退去予告の「1ヶ月前」は、連絡した日の翌月同日の前日以降が最短退去日になります。具体的な例で確認しておきましょう。
- 4月15日に連絡 → 最短退去日は 5月14日以降
- 10月10日に連絡 → 最短退去日は 11月9日以降
- 3月1日に連絡 → 最短退去日は 3月31日以降(翌月同日1日前=3月31日)
- 4月30日に連絡 → 最短退去日は 5月29日以降
- 1月31日に連絡 → 翌月に31日がないため 2月28日(うるう年は29日)以降
- 1月29日〜31日に連絡 → いずれも最短退去日は 2月28日(うるう年は29日)以降
「1ヶ月前」と「30日前」の違い
契約書が「1ヶ月前」ではなく「30日前」と日数で指定されている場合は注意が必要です。「30日前」は月の日数に関わらず固定で30日を数えます。
「1ヶ月前」の場合 → 最短退去日は2月28日
「30日前」の場合 → 最短退去日は3月1日(31日+30日=3月2日の前日)
→ 数日の差が生じることがある
自分の契約書が「1ヶ月前」と「30日前」のどちらで記載されているか確認してください。退去連絡の際に管理会社へ「今日連絡した場合の最短退去日はいつになりますか」と直接確認しておくのが最も確実です。
退去予告の期限を過ぎた場合はどうなるか
急な転勤や事情があって退去予告の期限に間に合わなかった場合でも、退去自体はいつでも可能です。ただし、連絡した日から予告期間分の家賃が発生します。
2月16日に退去連絡をした場合 → 3月15日までの家賃が発生
2月28日に退去連絡をした場合 → 3月27日までの家賃が発生
→ すぐに退去しても、連絡日から1ヶ月分の家賃は支払う必要がある
契約の満了日(更新日)を過ぎて退去した場合、たった1日でも「契約更新」とみなされ、更新料が発生するケースがあります。更新日が近い時期に引越しを考えている場合は、退去予告のタイミングを特に慎重に確認してください。
退去の条件はどこで確認するか
退去に関するルールは賃貸借契約書に記載されています。以下の順番で確認してください。
- 契約書の「解約」「契約の終了」「中途解約」などの条項を探す
- 退去予告の期限(1ヶ月前・30日前・2ヶ月前など)を確認する
- 退去月の家賃精算が「日割り」か「月割り」かを確認する
- 記載がない場合は「特約事項」を確認する(月割りの特約が書かれていることがある)
特約事項にも記載がなく判断が難しい場合は、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」では日割り計算が前提とされているため、日割りになることが一般的です。ただし管理会社との認識の食い違いを防ぐため、退去連絡の際に確認することをおすすめします。
退去の連絡先と方法
退去の連絡先は、毎月家賃を支払っている管理会社または設備トラブル時の連絡先になることが一般的です。契約書に記載されている方法で手続きを進めてください。
Webフォーム・入居者アプリ
最近最も増えている方法です。24時間手続きでき、送信完了の自動返信メールやスクリーンショットで「いつ連絡したか」の証拠が残るため、言った言わないのトラブルを防げます。
電話
管理会社に電話で退去の意思を伝える方法です。電話後に解約通知書の提出やフォーム申請を求められることもあります。電話だけで完了するか、書面提出が必要かは必ず確認してください。
解約通知書(退去届)の郵送
契約書に同封されている専用ハガキや書類を郵送する従来の方法です。郵送の場合、期限が「消印有効」か「必着」かを必ず確認してください。投函前に「本日郵送した」と電話で一報入れておくと確実です。
二重家賃を防ぐためのスケジュール管理
引越しの際は現在の住居と新居の家賃が重なる「二重家賃」が発生することがあります。完全に避けることは難しいですが、できるだけ短くする方法があります。
新居の審査承認後に退去予告をする
基本的には新居の入居審査に通過した後で退去予告を行うのが安全です。審査結果が出る前に退去予告をすると、新居が決まらないまま退去日だけが確定するリスクがあります。
審査通過後は契約手続きと並行して退去連絡を進めてください。物件によっては審査承認から契約開始日までが短く設定されているため、退去予告期限との兼ね合いを事前に確認しておくことが重要です。
退去予定の物件(空き待ち物件)を選ぶ
入居者が退去予定の物件は、退去日と入居可能日のスケジュールがある程度決まっているため、現在の住居の退去日と合わせやすいメリットがあります。ただし現入居者がいるため内見ができません。同じマンションの別の部屋や同じ間取りの部屋を内見することでリスクを軽減できます。
フリーレント付き物件を選ぶ
フリーレントとは、契約開始後の一定期間の家賃が無料になる条件です。「フリーレント1ヶ月」であれば、その期間に引越しをすることで実質的な二重家賃の負担を軽減できます。
日割りできる費用とできない費用
退去月の家賃が日割り計算になる契約の場合でも、すべての費用が日割りになるわけではありません。
| 費用の種類 | 日割りの可否 |
|---|---|
| 賃料 | 日割り可(一般的) |
| 共益費・管理費 | 日割り可(一般的)。物件によっては月割りのケースも |
| 駐車場使用料 | 日割り可(一般的) |
| CATV(ケーブルテレビ)使用料 | 日割り不可(月単位のサービス料) |
| 町内会費 | 日割り不可 |
| 固定水道料金 | 日割り不可 |
| 24時間サポート料 | 日割り不可 |
| 月額保証料 | 日割り不可 |
日割り計算の対象外の費用があるため、退去月の支払額は「家賃×日割り分」だけではありません。契約書や管理会社に事前に確認しておくと安心です。
退去後にやること・手続きリスト
退去予告と並行して、以下の手続きも進めておく必要があります。
ライフライン(電気・ガス・水道)の停止手続き
退去の1ヶ月〜2週間前を目安に停止の申し込みをしてください。電気・水道はWebや電話で手続きできますが、ガスは現地立会いが必要なケースがあるため早めに連絡しておくことが重要です。
インターネット回線の解約
インターネット回線は別途解約手続きが必要です。解約月にかかる違約金や工事費の有無を事前に確認してください。
郵便物の転送届
郵便局に転送届を提出することで、旧住所宛の郵便物が新住所に1年間転送されます。引越し前に手続きしておくと安心です。
各種住所変更手続き
引越し後は、運転免許証・マイナンバーカード・銀行口座・保険などの住所変更手続きが必要です。また自動車・バイクの登録変更も忘れずに行ってください。
火災保険の解約・確認
契約期間中に退去する場合、残余期間分の保険料が返金されることがあります。保険会社に解約手続きの方法と返金の有無を確認しておきましょう。
退去立会い
退去日または退去日以前に管理会社との立会いを行い、室内の状態を確認します。傷・汚れ・設備の不具合について原状回復費用の負担範囲が確認されます。立会い時間は1〜2時間程度が目安です。
まとめ:退去予告でトラブルを防ぐポイント
退去予告は契約書の内容を正確に把握したうえで、余裕を持って進めることがトラブル防止の基本です。
- 退去予告期間(1ヶ月前・2ヶ月前など)と日割りの有無を契約書で確認する
- 「1ヶ月前」は「翌月同日の前日以降」が最短退去日になる
- 「1ヶ月前」と「30日前」は月によって数日の差が生じることがある
- 期限を過ぎても退去は可能だが、連絡日から予告期間分の家賃が発生する
- 更新日をまたいだ場合は更新料が発生するケースがある
- 退去予告は新居の審査承認後に行うのが安全
- CATV・24時間サポート・月額保証料などは日割り計算の対象外になることが多い
- ライフライン・インターネット・住所変更などの手続きも早めに進める
不明点がある場合は、管理会社や不動産会社へ早めに確認しておくことが大切です。

