賃貸物件を借りる際、賃料とは別に「敷金」や「保証金」を求められることがあります。「返ってくるお金なのか」「敷金と保証金は何が違うのか」「保証会社に入るなら敷金は不要では?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
2020年4月に施行された改正民法では、敷金の定義や返還ルールが初めて法律上に明文化されました。この記事では、敷金・保証金の意味・違い・返金ルール・相場について、不動産仲介の実務経験をもとに整理して解説します。償却(敷引き)や保証会社との関係など、より詳しいテーマは記事内の関連リンクから個別に解説しています。

最終更新日:2026年07月05日
敷金・保証金とは?
敷金・保証金とは、賃貸物件を借りる際に、家賃の滞納や退去時の原状回復費用に備えて、あらかじめ貸主に預けておくお金のことです。
結論から言うと、敷金と保証金に意味上の大きな違いはありません。どちらも「入居中や退去時に発生する費用に備えて、あらかじめ貸主に預けておくお金」という点では同じです。呼び方の違いが生まれる主な理由は、地域による表記の慣習です。関東では「敷金」、関西では「保証金」という表記が使われる傾向があります。
改正民法(第622条の2)で定義されたのは「敷金」という名称ですが、法務省の解説では「いかなる名目によるかを問わず」という表現が使われています。つまり「保証金」という名目で預けたお金であっても、実態が敷金と同じであれば敷金の規定が適用されます。契約書の名称だけでなく、内容をよく確認することが重要です。
保証会社があるのに、なぜ敷金・保証金も必要なのか
近年の賃貸契約では、ほとんどの物件で保証会社への加入が必須となっています。「保証会社があるなら、敷金や保証金は不要では」と感じる方も多いですが、実際には保証会社を利用していても敷金・保証金が設定されている物件は多くあります。
理由は、保証会社と敷金・保証金の役割が異なるからです。保証会社が立て替えるのは主に家賃の滞納分で、立て替えた分は後日入居者が返済する義務を負います。一方、敷金・保証金は退去時の原状回復費用などに充てられるお金で、役割が別物です。そのため、保証会社への加入と敷金・保証金の預け入れが両方求められるケースは珍しくありません。
賃貸契約に必要な家賃保証会社に関する費用|種類や相場などについての詳細説明
敷金・保証金は返ってくる?返金ルール
敷金・保証金は、返ってくる場合と返ってこない場合があります。返金されるかどうかは、退去時の自己負担費用の有無・金額と、契約内容によって決まります。
退去時に借主の自己負担となる修繕費やクリーニング費用が発生しない場合は、敷金・保証金は全額返還されます。自己負担費用が発生しても、その金額が敷金・保証金の範囲内であれば差額が返金されます。
敷金60,000円(賃料1か月分)/退去時のルームクリーニング費用33,000円/その他補修費なし
→ 返還額:60,000円 − 33,000円 = 27,000円
返金されないケースは主に2つあります。1つ目は「全額償却」や「敷引き」が設定されている場合で、退去時の修繕内容にかかわらず、あらかじめ決められた金額を差し引く契約条件です。2つ目は、借主の故意・過失による損傷や、通常の使用を超える汚損・破損が敷金・保証金の額を超えている場合です。
経年劣化や通常の使用による損耗(通常損耗)の修繕費用は、原則として貸主の負担です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、原状回復は入居者が借りた当時の状態に戻すことではないと明確化されています。退去時に不当な請求を受けたと感じた場合は、契約内容とあわせてこのガイドラインを確認することをおすすめします。
民法(e-Gov法令検索)
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省)
敷金の償却・敷引きとは
契約によっては「敷金償却1ヶ月」「保証金の50%償却」といった特約が設定されていることがあります。これは、退去時の修繕内容にかかわらず、あらかじめ決められた金額(割合)を返還しないという契約条件で、関西では「敷引き」とも呼ばれます。私の経験上、償却が設定された物件では、実質的に礼金と同じような性質のお金になっているケースがほとんどです。
償却の金額や条件について法律上の明確な上限規定はなく、契約内容によって大きく異なります。「償却1ヶ月」「償却50%」など表記もさまざまなので、契約前に必ず内容を確認しておきましょう。
敷金・保証金の相場
敷金・保証金の相場は、地域や物件タイプによって差があります。
- 敷金(関東など):賃料の1〜2ヶ月分程度
- 保証金(関西など、敷引きありの場合):賃料の3〜6ヶ月分程度
- 名古屋エリアの一般的な賃貸物件:賃料の1ヶ月分程度が多い
私の経験上、名古屋エリアでは敷金1ヶ月・礼金1ヶ月という組み合わせの物件が中心ですが、築浅・人気エリアの物件では敷金が2ヶ月に設定されているケースもあります。逆に「敷金・礼金0円」という物件も増えていますが、その分クリーニング費用や退去時の原状回復費用が別途明記されているケースが多いため、初期費用だけでなく退去時の負担も含めて確認することが大切です。
礼金との違い
敷金・保証金は「預けるお金(原則は返ってくる)」であるのに対し、礼金は「貸主へのお礼として支払うお金(返ってこない)」という点が大きな違いです。ただし、償却・敷引きが設定された敷金・保証金は、実質的に礼金と同じ性質になることもあります。
賃貸の礼金とは?相場・敷金との違い・交渉のポイントまで不動産会社が解説
契約前に確認しておきたいポイント
敷金・保証金のトラブルの多くは、契約前の確認不足から生じます。次の点は必ずチェックしておきましょう。
- 契約書上の名称が「敷金」「保証金」のどちらでも、償却(敷引き)の有無を確認する
- 償却がある場合は、金額または割合を確認する
- クリーニング費用など、償却以外に借主負担となる項目がないか確認する
- 返還時期(退去後何日以内か)が契約書に明記されているか確認する
- 保証会社加入の有無と、敷金・保証金との役割の違いを理解しておく
「敷金・保証金がないから安心」と考えて契約された方が、退去時に想定より高いクリーニング費用を請求されて驚くケースを何度か見てきました。敷金・保証金の有無だけでなく、契約書に記載されている退去時の費用負担の内容まで、契約前に確認しておくことをおすすめします。
よくある質問
まとめ:敷金・保証金は契約内容と償却の有無で判断する
- 敷金と保証金に意味上の大きな違いはなく、地域による呼び方の慣習が主な違い
- 保証会社があっても、役割が異なるため敷金・保証金が別途必要になることが多い
- 退去時の自己負担費用がなければ全額返還。あっても敷金・保証金の範囲内なら差額が戻る
- 「全額償却」「敷引き」がある契約では、修繕内容にかかわらず一定額が返還されない
- 名古屋エリアの相場は敷金1ヶ月分程度が中心。敷金なし物件は退去時の費用条件も確認が必要
- 敷金・保証金は「原則返ってくるお金」、礼金は「返ってこないお金」という違いがある
- 契約前は、償却の有無・金額、返還時期、借主負担項目を必ず確認する
