賃貸の貸主とは?大家・管理会社・仲介会社との違いを解説

最終更新日:2026年06月27日

賃貸物件を探していると「貸主」という言葉を目にする機会があります。大家や管理会社とは何が違うのか、所有者と違うのか、よくわからないという方も多いと思います。

この記事では、賃貸における貸主の定義から、大家・管理会社・仲介会社それぞれとの関係、貸主が個人か法人かによる実務上の違いまで、仲介実務の現場目線でわかりやすく解説します。

貸主についての記事イメージ

賃貸の貸主とは

賃貸における「貸主」とは、賃貸借契約において賃貸物件を貸す側の当事者のことを指します。法律上は、民法の賃貸借契約(民法601条)において賃料を受け取り、物件を使用・収益させる義務を負う者です。

一般的にイメージしやすい言い方をすると「物件を貸している人・会社」です。ただし、後述するように貸主=所有者とは限らず、また貸主=大家とも厳密にはイコールではありません。

ポイント

貸主は賃貸借契約上の当事者であり、借主に対して物件を使用・収益させる義務を負い、借主から賃料を受け取る権利を持ちます。所有者・管理会社のいずれかが貸主になるケースが多いです。

貸主と借主の違い

賃貸借契約は「貸主」と「借主」が当事者です。

貸主
借主
立場
物件を貸す側
物件を借りる側
主な義務
物件を使用・収益させる義務、修繕義務
賃料支払義務、用法遵守義務
主な権利
賃料請求権
物件の使用・収益権

借主(入居者)の立場で読んでいる方は、契約書に「貸主」として記載されている相手が、自分の賃貸借契約上の当事者です。修繕請求や解約通知など、重要なやり取りの相手は契約書に記載された貸主になります。

貸主と大家の違い

「大家さん」という言葉は日常的によく使われますが、法律上の定義はありません。一般的には、アパートやマンションを所有・管理して貸し出している個人を指すことが多い言葉です。

貸主と大家はほぼ同じ意味合いで使われることが多いですが、厳密には次のような違いがあります。

  • 「大家」は主に個人の所有者・貸主を指す俗称
  • 「貸主」は契約書や法律文書上の正式な呼称
  • 貸主が法人(不動産会社など)の場合、「大家さん」とは呼ばない

また、管理会社が貸主として契約書に記載されるケースもあります(後述)。この場合、物件の所有者と契約書上の貸主が異なる状態になります。

昔は所有者・貸主・管理がすべて同一という物件も多く、いわゆる大家さんがその物件や、すぐ近くに住んでいるというケースが一般的でした。しかし最近は、所有者が管理業務を管理会社に委託していることが多くなり、入居者が大家さんと直接やり取りをする機会は減っています。

貸主と管理会社の関係

賃貸物件では、所有者が物件の管理を管理会社に委託しているケースがほとんどです。管理委託か否かで、貸主の位置づけが変わります。

管理委託の場合

所有者が管理会社に管理業務を委託しているケースです。この場合、契約書上の貸主は所有者本人になります。管理会社は貸主(所有者)の代理として、入居者対応・賃料管理・修繕手配などの業務を行います。

仲介会社は管理会社との間で情報のやり取りをしますが、あくまで契約当事者は所有者(貸主)と借主です。

管理会社が貸主代理になる場合

所有者から募集・契約に関する権限を委任された管理会社が、「貸主代理」として募集を行うケースもあります。この場合、契約書上の貸主はあくまで所有者ですが、契約手続きや交渉の窓口は代理権を持つ管理会社になります。

取引態様としては「代理」と表記されます。代理として動く管理会社・不動産会社が借主から仲介手数料を請求することがあるため、費用については事前に確認しておくと安心です。

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サブリース(転貸借)の場合

管理会社が所有者から物件を一括借上げし、管理会社自身が転貸する形態をサブリースといいます。この場合、契約書の貸主欄には管理会社の名前が入ります。つまり、借主の直接の契約相手は管理会社であり、所有者とは直接の賃貸借関係がありません。

注意

サブリース物件では、所有者が経営難などで管理会社との契約を解除した場合、借主との契約にも影響が生じる可能性があります。入居中に突然状況が変わるケースもゼロではないため、大手・信頼性の高い管理会社かどうかを確認しておくことが重要です。

取引態様「貸主」とは何か

物件情報(募集広告)には「取引態様」という項目があります。取引態様は宅地建物取引業法34条に基づき明示が義務付けられており、物件の取引がどのような形で行われるかを示すものです。

取引態様には主に次の3種類があります。

取引態様
内容
貸主
物件の貸主(所有者または転貸権者)が直接募集
代理
不動産会社・管理会社が貸主の代理として募集・契約
仲介
不動産会社が貸主と借主の間を仲介

取引態様が「貸主」の物件は、貸主(所有者または管理会社)が直接募集しているため、間に仲介会社が入りません。そのため、仲介手数料が不要になるケースが多いです。

注意

取引態様が「貸主」でも、仲介手数料が必ず無料になるわけではありません。「代理」の場合、代理として動く不動産会社が借主から仲介手数料を請求することがあります。また「貸主」直接契約であっても、事務手数料などの名目で費用が発生するケースがあるため、事前に確認が必要です。

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所有者(オーナー)と貸主の違い

「貸主=所有者」と思っている方が多いですが、実際には異なるケースも少なくありません。

例えば、法人が所有するビルの一室を別の会社がサブリースして転貸している場合、借主から見た貸主は転貸している会社(管理会社等)であり、ビルの所有者ではありません。

また、相続や売買によって物件の所有権が移転した場合、契約書上の貸主は変更されますが、入居者が直接関与することはなく、管理会社を通じて通知が届くのが一般的です。

ポイント

貸主と所有者(オーナー)は同一の場合もあれば、異なる場合もあります。サブリース物件では管理会社が貸主になります。いずれの場合も、借主が直接確認するのは難しいため、仲介会社に確認するのが現実的です。

貸主が個人・法人・不動産会社の場合の違い

貸主が誰かによって、実務上の対応がかなり変わります。私の経験上、貸主の属性によって交渉の進みやすさや柔軟性に大きな差があります。

貸主が個人の場合

個人の貸主(いわゆる個人大家)は、物件の収支や入居者を自分で判断できるため、条件交渉に応じてもらいやすい場合があります。「この人ならと思える入居者には家賃を少し下げてもいい」という判断をすることもあります。

一方で、個人の判断に依存するため、対応の速度や内容にばらつきが出ることもあります。また、貸主が高齢の場合、相続による所有者変更が入居中に発生することもあります。

貸主が法人の場合

近年は法人(不動産会社・管理会社・事業会社など)が貸主となる物件が増えています。法人が貸主の場合、社内の規程や承認フローに基づいて判断が行われるため、個別の交渉や融通が利かないケースが多いです。

私の経験上も、管理会社の担当者が「交渉の余地はない」と言い切るケースは、貸主が法人の物件に多い印象です。将来の売却査定に影響するため賃料水準を変えたくない、という事情もあります。

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貸主が不動産会社(自社物件)の場合

不動産会社が自社で所有・管理する物件を直接貸し出すケースです。この場合、取引態様は「貸主」となり、仲介会社を通さないため仲介手数料が不要になることが多いです。ただし、自社の物件のみの案内になるため、選択肢の幅は狭くなります。

貸主も入居審査をする

賃貸の入居審査というと、保証会社や管理会社による審査をイメージする方が多いと思います。しかし、保証会社の審査が通ったあとに、貸主が独自に審査をするケースがあります。

保証会社は「家賃を払えるか」という信用面を主に審査しますが、貸主はそれ以外の要素も見ることがあります。私の経験上、貸主が独自に審査を行うケースで確認されやすい事項には次のようなものがあります。

  • 職業・勤務先(夜間営業の仕事など特定の業種を不可とする貸主がいる)
  • 年齢(高齢者入居を制限する貸主がいる)
  • 同居人数・家族構成(子どもの人数や外国籍であることを理由に断られるケース)
  • ペットや楽器演奏の有無
注意

年齢・国籍・家族構成などを理由に入居を認めるかどうかは、最終的に貸主が判断します。保証会社の審査が通っていても、貸主が入居を拒否することはできます。申込後に判明するケースもあり、事前に確認できるとは限りません。

保証会社の審査が通っても入居できないことがあります。知らずに進めると落胆が大きいため、可能であれば仲介担当者に「貸主の独自審査はあるか」と確認しておくことをおすすめします。

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まとめ

  • 貸主とは賃貸借契約において物件を貸す側の当事者であり、契約書に記載される
  • 大家は主に個人の貸主を指す俗称であり、法律上の定義はない
  • 管理委託の場合は所有者が貸主、サブリースの場合は管理会社が貸主になる
  • 取引態様「貸主」の物件は仲介手数料不要なケースが多いが、必ずしも無料とは限らない
  • 貸主が法人の場合は個別交渉に融通が利かないことが多い
  • 保証会社の審査が通っても、貸主の独自審査で入居を断られるケースがある

よくある質問

Q. 契約書の貸主欄に管理会社の名前が入っていました。これは普通ですか?

はい、サブリース(転貸借)の形態であれば、管理会社が貸主として記載されます。この場合、借主の直接の契約相手は管理会社です。所有者の名前は契約書に登場しないのが通常です。契約内容に疑問がある場合は、仲介会社または管理会社に確認してください。

Q. 取引態様「貸主」の物件は仲介手数料がかかりませんか?

取引態様が「貸主」の場合、仲介会社が間に入らないため仲介手数料は原則かかりません。ただし、事務手数料や書類作成費などの名目で費用が発生するケースがあります。また、取引態様が「代理」の場合は代理の不動産会社が手数料を請求することがあります。費用については事前に確認するようにしてください。

Q. 入居後に物件の所有者が変わったら、契約はどうなりますか?

所有者が変わっても、賃貸借契約は原則として新しい所有者に引き継がれます(民法605条の2)。急に退去を求められることはありませんが、新しい貸主の名義に契約書が更新される場合があります。通知は管理会社を通じて行われるのが一般的です。

Q. 保証会社の審査が通ったのに入居を断られることはありますか?

あります。保証会社は主に家賃支払い能力を審査しますが、貸主が職業・年齢・同居人数などを独自に確認し、保証会社の審査後に入居を断るケースが実際に起きています。申込前に仲介担当者を通じて貸主の審査方針を確認しておくことをおすすめします。

Q. 貸主が個人と法人では、どちらが交渉しやすいですか?

一般的には個人の貸主のほうが柔軟に判断できるため、家賃交渉や条件変更に応じてもらいやすい傾向があります。法人の貸主は社内規程や査定への影響から賃料を変えたくないケースが多く、交渉が通りにくいことが多いです。ただし物件や状況によって異なるため、担当者に個別に確認することが重要です。

栗田伸裕のプロフィール写真
執筆者
栗田 伸裕

株式会社マチラボ 代表取締役

1級FP技能士
宅地建物取引士
マンション管理士
賃貸不動産経営管理士

これまで1,000件以上のお部屋探しをサポートしてきた賃貸仲介の実務経験をもとに、賃貸契約や初期費用、退去費用など賃貸に関する情報をわかりやすく解説しています。1級ファイナンシャルプランナーおよび宅地建物取引士としての知識を活かし、家賃だけでなく初期費用や更新費用、退去費用なども含めた「総合的な住居コスト」を意識したお部屋探しのアドバイスを行っています。また、名古屋出身で名古屋の賃貸市場やエリア特性にも精通しており、地域事情を踏まえた現実的で正確な情報提供を心がけています。