賃貸のクリーニング費用とは?払う必要はある?相場・特約・注意点を解説

賃貸契約でよく見かける「クリーニング費用」。退去時に請求されることが多い費用ですが、必ず払わなければならない費用ではなく、契約内容・特約の書き方によって支払い義務が変わります。また、支払いタイミングが入居時か退去時かで印象が大きく異なる仕組みや、相場・交渉の現実など、知っておくべきポイントが多い費用です。本記事では、クリーニング費用の基本から支払い義務の判断方法・相場・よくある疑問まで、実務ベースで解説します。
賃貸のルームクリーニングイメージ画像

賃貸のクリーニング費用とは

賃貸契約における「クリーニング費用」とは、退去後または入居前に行われる専門業者による室内清掃にかかる費用のことです。契約書や管理会社によって「室内清掃費用」「ハウスクリーニング費」「原状回復清掃費」など呼び方はさまざまですが、指しているものは基本的に同じです。

目的は大きく2つです。退去後に次の入居者募集に向けて室内を清掃すること、そして入居前に清潔な状態で引き渡すことです。いずれも日常的な掃除とは異なり、床・水回り・設備等を専門業者が一括清掃するもので、「誰が負担するか」は別として、物件の入退去サイクルを成立させるために必要なコストです。

クリーニング費用の対象外となる汚れ・損傷

クリーニング費用でカバーされるのは、通常使用を前提とした室内全体の清掃です。故意・過失による損傷や、通常の使用範囲を超える汚れは「原状回復費用」として別途請求されます。

注意

以下はクリーニング費用の対象外となり、別途費用が発生するケースが多いです。

  • 換気不足・清掃不足が原因の壁紙カビ
  • タバコのヤニによる変色・臭い
  • ペットによる傷・臭い・汚れ
  • キッチン周りの油汚れの放置

見た目は軽微でも、臭いや内部への影響があると判断されると、クロス全面張替えや設備交換など高額な費用につながるケースがある点に注意が必要です。

クリーニング費用は必ず払わなければならないのか

結論として、クリーニング費用は必ず支払わなければならない費用ではありません。支払い義務があるかどうかは、契約内容によって決まります。

前提として、国土交通省のガイドラインでは「通常の使い方で生じた汚れや経年劣化」は貸主負担とされています。水回りの使用による汚れや床の軽い汚れなどは通常損耗にあたり、本来は貸主側で負担すべきものです。そのため、契約に何も定めがない場合は、退去時にクリーニング費用を支払う必要はないというのが基本的な考え方です。

特約がある場合の考え方

実際の契約では「退去時のクリーニング費用は借主負担とする」といった特約が設けられていることが多く、この場合は借主が費用を負担するケースもあります。ただし、特約があれば必ず有効になるわけではありません

特約の書き方 有効性の目安
金額・㎡単価・清掃範囲が明記されており、契約時に説明がある 支払い義務が認められやすい
「クリーニング費用は借主負担」とだけ書かれている 曖昧なため、争いになると無効と判断される可能性がある
記載なし 支払い義務はないのが原則
ポイント

クリーニング費用は一律に支払うものではなく、契約書の書き方と内容によって結論が変わる費用です。入居前に特約の記載内容・金額・清掃範囲を必ず確認しましょう。

名古屋エリアでの実態:約9割の物件で設定あり

地域によって差はありますが、当社の営業エリアである名古屋では、体感として約9割前後の物件で何らかのクリーニング費用が設定されています。「借主負担のクリーニング費用」はあらかじめ契約条件に含まれており、一般的な費用項目のひとつになっています。

これは、退去時の原状回復トラブルを防ぐ目的や、貸主側がコストをあらかじめ見込む目的が背景にあります。近年はガイドラインや判例の影響もあり、費用負担を事前に明確にしておく流れが強まっています。

支払いタイミング:契約時か退去時か

クリーニング費用の支払いタイミングは、「契約時(入居時)に支払うケース」と「退去時に支払うケース」の2パターンに分かれます。名古屋エリアの感覚では、退去時支払いが約6割・契約時支払いが約4割程度です。

支払いタイミング 内容 借主側のポイント
退去時支払い(約6割) 退去後に精算。敷金がある場合は差し引かれるのが一般的 入居時の費用を低く抑えられるが、退去時に想定外の請求と感じやすい
契約時支払い(約4割) 入居時に定額で支払い。退去時の精算はなし 費用を事前に把握できる。退去時に追加請求される心配がない

退去時支払いが多い理由

退去時支払いの物件が多い背景には、募集時の「見せ方」の問題があります。賃貸ポータルサイトでは初期費用の総額が比較されやすく、クリーニング費用を入居時に設定すると他物件と比較したときに不利になります。退去時支払いにしておけば初期費用の見積もりに含まれないため、表面的な初期費用を低く見せることができます。

ポイント

「実際の総コストは同じでも、入居時の負担を軽く見せるために退去時支払いが選ばれている」という構造です。入居時の費用だけで判断せず、退去時に発生するクリーニング費用も含めたトータルコストで比較することが重要です。

クリーニング費用の相場

クリーニング費用は地域・物件グレード・管理会社の設定によって差がありますが、一般的な目安は以下の通りです。

間取り 相場の目安
ワンルーム・1K 30,000円〜50,000円程度
1DK・1LDK 40,000円〜60,000円程度
2LDK以上 60,000円〜150,000円程度

専有面積が広くなるほど清掃範囲が増えるため、金額も比例して高くなります。新築・分譲賃貸・設備が多い物件では、同じ間取りでも相場より高めになることがあります。

エアコンクリーニング費用は別途設定されることも

注意が必要なのは、エアコンクリーニング費用がクリーニング費用と別に設定されているケースです。費用の目安は以下の通りです。

  • 通常の壁掛けエアコン:1台あたり10,000円〜15,000円程度
  • お掃除機能付きエアコン:1台あたり20,000円〜25,000円程度(構造が複雑なため割高)

契約時に「クリーニング費用にエアコン清掃が含まれているか、別途請求されるか」を必ず確認しておきましょう。

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FAQ(よくある質問)

Q. クリーニング費用が高すぎると感じます。交渉できますか?
交渉自体は可能ですが、受け入れられる可能性はあまり高くありません。クリーニング費用は貸主・管理会社が固定条件として設定しているケースが多く、賃料やフリーレントのように柔軟に調整される項目ではないためです。特に大手管理会社や分譲賃貸では金額が統一されており、個別交渉が通りにくい傾向があります。現実的な対応としては、クリーニング費用そのものを下げるのではなく、「初期費用の総額としてどう調整するか」という視点で交渉する方が結果につながりやすいです。金額に納得できない場合は、最初から条件の合う物件を選ぶという判断も重要です。

Q. 礼金がある物件はクリーニング費用が不要になりますか?
礼金があってもクリーニング費用が不要になるわけではありません。礼金は契約時に貸主へ支払う謝礼金的な性質の費用であり、クリーニング費用とは目的が異なります。確かにクリーニング費用の中には貸主側の収入確保という側面が含まれることもありますが、契約上はあくまで別の費用として扱われます。「合計でどれだけ負担があるか」というトータルコストの視点で判断することが重要です。

Q. 退去前に自分で清掃すればクリーニング費用を値切れますか?
基本的には難しいです。多くの物件ではクリーニング費用は「実際の汚れの程度」に応じて変動する費用ではなく、契約条件として定額で設定されています。また管理会社・貸主は専門業者による清掃を前提としており、個人の清掃では代替とみなされません。ただし、自分で清掃しておくこと自体は無意味ではありません。過度な汚れ・臭い・カビなどは、クリーニング費用とは別に原状回復費用として追加請求される可能性があるため、通常の範囲で清掃しておくことで不要な請求を防ぐ効果はあります。

Q. 敷金がない物件でもクリーニング費用は請求されますか?
はい、請求されることがあります。敷金なし物件では退去時に敷金から差し引くという処理ができないため、退去時に別途クリーニング費用の請求が来るか、入居時にクリーニング費用として先払いする形になることが多いです。敷金なし物件を検討する際は、クリーニング費用の扱いを事前に確認しておくことをおすすめします。

Q. 短期間しか住んでいなくてもクリーニング費用は同額ですか?
契約条件として定額設定されている場合は、居住期間の長さに関わらず同額となるケースがほとんどです。ただし、特約に明確な根拠がなく曖昧な記載にとどまっている場合は、短期居住であることを理由に減額交渉の余地が生じることもあります。まずは契約書の特約の記載内容を確認することが先決です。

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まとめ

  • クリーニング費用は必ず払う費用ではなく、契約内容・特約の書き方によって支払い義務が決まる
  • 特約があっても金額・範囲が不明確な場合は、争いになると無効と判断される可能性がある
  • 名古屋エリアでは約9割の物件でクリーニング費用の設定あり。支払いタイミングは退去時が約6割・入居時が約4割
  • 退去時支払いが多いのは初期費用を低く見せるための業界慣行。トータルコストで比較することが重要
  • 相場はワンルーム・1Kで3〜5万円、2LDK以上で6〜15万円程度。エアコン清掃が別途設定されているケースに注意
  • 故意・過失による汚れはクリーニング費用の対象外で、原状回復費用として別途請求される
  • 交渉の余地は小さいため、入居前に契約書の特約内容・金額・エアコン清掃の扱いを必ず確認しておくことが重要

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執筆者
栗田 伸裕

株式会社マチラボ 代表取締役

1級FP技能士
宅地建物取引士
マンション管理士
賃貸不動産経営管理士

これまで1,000件以上のお部屋探しをサポートしてきた賃貸仲介の実務経験をもとに、賃貸契約や初期費用、退去費用など賃貸に関する情報をわかりやすく解説しています。1級ファイナンシャルプランナーおよび宅地建物取引士としての知識を活かし、家賃だけでなく初期費用や更新費用、退去費用なども含めた「総合的な住居コスト」を意識したお部屋探しのアドバイスを行っています。また、名古屋出身で名古屋の賃貸市場やエリア特性にも精通しており、地域事情を踏まえた現実的で正確な情報提供を心がけています。