「エレベーターなし物件は何階まで住んで大丈夫なのか」「4階はさすがにきついのか」と迷いながら物件を探している方は多いと思います。
結論から言うと、多くの人が比較的現実的に検討しやすいのは3階程度までです。4階になると、買い物・ゴミ出し・引越し・体調不良などを含めた日常生活の負担を、慎重に考えたほうがよくなります。
ただし、「階段を上ること=運動」と前向きに考えられる人にとっては、3〜4階程度であればそれほど苦にならず、むしろ日常的に運動量を確保できるというメリットにもなり得ます。単純に「4階はやめたほうがいい」という話ではなく、生活スタイル・年齢・荷物量・家賃や共益費との差によって評価が変わる、というのが実務上の感覚です。
この記事では、名古屋で1,000件以上の賃貸仲介を行ってきた宅地建物取引士の立場から、階数別の負担・共益費の差・引越し時の注意点・メリットまで、実務経験を踏まえて解説します。

最終更新日:2026年7月20日
エレベーターなし物件は何階まで大丈夫?
結論を先にまとめると、階数ごとの目安は次のようになります。
ただし、この目安は年齢だけで判断できるものではありません。若い方でも、次のような場合は負担が大きくなりやすい傾向があります。
- 買い物の頻度・量が多い
- 車から何度も荷物を運ぶ生活をしている
- 大型の荷物を持つ機会が多い
- ペットを飼っている
- 子育ての予定がある
逆に、次のような方であれば、4階でも十分に選択肢になり得ます。
- 荷物が少ない
- 通販やネットスーパーを活用している
- 階段の上り下りを運動と考えられる
- 単身で暮らしている
- 居住期間が短期〜中期の予定
2階・3階・4階・5階で実際の負担はどう違う?
2階
エレベーターなしでも、比較的問題になりにくい階数です。ただし、ベビーカーや車いすを使う方、足腰に不安がある方、大型荷物を頻繁に運ぶ方にとっては、2階であっても負担に感じられることがあります。
3階
多くの人にとって、現実的に検討しやすい範囲です。ただし、手ぶらで階段を上るのと、スーパーの買い物袋・米・水・飲料ケース・キャリーケースなどを持って上るのとでは、負担の大きさがまったく違います。「階段を上れるかどうか」ではなく、荷物を持った状態で日常的に上り下りできるかで考えることが大切です。
4階
名古屋ではエレベーターなし4階建ての賃貸物件が一定数存在するため、この記事では特に詳しく扱います。若く健康な方であれば、普通に生活できているケースも多くあります。
また、階段の上り下りを毎日の運動と捉えられる方であれば、むしろ日常的に運動量を確保できるというメリットにもなります。「運動のためにウォーキングをするくらいなら、自宅の上り下りを運動と考える」という発想です。
ただし、真夏の日、疲れて帰宅した日、荷物が多い日、体調不良の日、雨の日、忘れ物をして往復する場合まで想定しておく必要があります。
5階
名古屋の賃貸ではかなり少ない階数です。当社がこれまで取り扱い・資料上で確認した範囲では、名古屋で5階建て・エレベーターなしの賃貸物件はほとんど見かけず、これまで確認できたのは2物件程度にとどまっています。これは、名古屋に5階建て・エレベーターなし物件がそれだけしか存在しないという意味ではなく、当社が実務の中で目にする機会が少ない、という感覚です。
5階になると、「上れるかどうか」ではなく、その生活を数年間、毎日続けられるかを考える必要があります。
名古屋では2000年前後築の「4階建て・エレベーターなし」を比較的よく見かける
私が名古屋の賃貸物件を扱ってきた実務経験では、2000年前後に建てられた4階建て・エレベーターなしの賃貸マンションを比較的よく見かけます。背景には、建築コストや維持管理費を抑える目的があったと考えられます。
エレベーターには、本体の設置費用に加えて、エレベーターシャフトなどの建築コスト、定期点検費、保守費用、電気代、将来的な修繕・更新費など、さまざまなコストがかかります。そのため、4階建てであってもエレベーターを設置せず、建築費・維持費を抑える設計が採用された物件が見られます。
最近の4階建てはエレベーター付きが増えている
一方で、私の実務感覚として、近年建築された4階建て賃貸マンションでは、以前よりエレベーターが設置されている物件が多くなっている印象があります。背景として、入居者の利便性重視、高齢化への対応、バリアフリー意識の高まり、宅配や大型家具家電の搬入への対応、上階の募集力を高める狙いなどが考えられます。
ただし、「現在は4階建てならほぼエレベーターが必須」というわけではなく、あくまで最近の新築・築浅物件では、4階建てでもエレベーター付きの物件をよく見かける、という程度の傾向です。
5階建て・エレベーターなしは違法?法律上のポイントを簡潔に
結論として、5階建て・エレベーターなしだから直ちに違法というわけではありません。「6階以上なら普通のエレベーターが法律上必須」という単純なルールではないためです。
建築基準法では、高さ31mを超える建築物について、原則として非常用昇降機(消火・救出活動のための設備で、一般利用のエレベーターとは別の基準)に関する規定があります。一方、1995年の旧建設省「長寿社会対応住宅設計指針」では、6階以上の住宅にはエレベーターを設置し、3〜5階の住宅にもできる限り設置する、という考え方が示されました。ただし、これは義務ではなく努力目標的な指針であり、全国すべての賃貸マンションに一律で適用される規定ではありません。自治体の条例や建物の規模・用途によって、別の基準が適用される場合もあります。
エレベーターなし物件は共益費が安い
エレベーターなし物件の大きなメリットの一つが、共益費の安さです。名古屋市内の一般的な賃貸物件では、エレベーターなしの物件は共益費が月額3,000〜5,000円程度、エレベーターありの物件は月額6,000〜12,000円程度に設定されているケースが多く見られます。これは全国一律の統計ではなく、当社が名古屋で取り扱っている物件でよく見られる水準です。
共益費の詳しい仕組みについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
共益費とは?管理費との違い・相場・共益費なし物件の注意点を不動産会社が解説
なぜ共益費が安くなりやすいのか
エレベーターには、保守点検・法定検査・電気代・清掃管理・故障修理・部品交換・将来的な大規模更新など、さまざまな維持コストがかかります。そのため、エレベーターがない建物では維持管理費を抑えやすく、結果として共益費が安く設定されることがあります。ただし、共益費はオートロック・宅配ボックス・防犯カメラ・共用部清掃・インターネット・管理人の有無など、他の設備・サービスにも左右されるため、エレベーターの有無だけで決まるわけではありません。
年間で見ると共益費の差は大きい
例えば、エレベーターなしで共益費4,000円、エレベーターありで共益費9,000円の物件を比較すると、月々5,000円の差になります。年間では60,000円、5年間では300,000円の差です。「毎日の階段」と「毎月の固定費削減」のどちらを重視するかという判断になります。比較する際は、家賃だけでなく家賃+共益費の総額で見ることが重要です。
階段を毎日の運動と考えればメリットにもなる
ここまで負担面を中心に説明してきましたが、階段の上り下りは、健康で運動習慣をつけたい方にとっては、日常生活の中で自然に体を動かせるというメリットにもなります。3階や4階まで毎日数回上り下りすれば、意識的に運動時間を作らなくても、階段を使う習慣が自然と身につきます。
階段がそれほど苦にならない方、日常的に運動をしたい方、デスクワーク中心の方、若く健康な方であれば、4階・エレベーターなしでもそれほどデメリットに感じない場合があります。ただし、運動になることと、荷物・けが・子育て時の不便さは別の問題です。「運動になるから誰にでもおすすめ」というわけではない点には注意してください。
一番負担になるのは買い物・重い荷物
実際の生活で最も負担になりやすいのは、買い物です。特に次のような荷物は負担が大きくなりがちです。
- 水
- 米
- 飲料ケース
- 酒類
- 洗剤
- トイレットペーパー
- ペット用品
- まとめ買いをした食材
重要なのは、階段を1回上れるかどうかではなく、荷物を持って何度も往復する可能性があるという点です。車を利用する場合は、駐車場から部屋まで荷物を一度に運べるかどうかも考慮しておくとよいでしょう。
忘れ物・ゴミ出しなど毎日の往復も負担になる
忘れ物をしたときが意外につらい
例えば4階の部屋を出て1階まで降りたところで、車の鍵や財布を忘れたことに気づき、また4階まで戻ってから1階へ向かう、といったことが起こります。こうした日常のちょっとした往復が、意外に負担になります。
ゴミ出しも毎週の負担になる
燃えるゴミ・ペットボトル・段ボール・資源ゴミなど、ゴミ出しも毎週発生する作業です。特に4階の場合、大きなゴミ袋や段ボールを持って階段を下りることになります。ゴミ置き場が建物入口のすぐ近くにあるか、敷地の奥や道路を挟んだ場所にあるかによっても負担は変わるため、内見時に確認しておくとよいでしょう。共用部分の使い方については、以下の記事も参考になります。
賃貸の共用部分とは?専有部分との違い・管理責任・禁止行為を解説
引越し・大型家具家電の搬入に注意
引越し料金・作業条件への影響
エレベーターなしの上階では、階段を使って家具・家電・段ボールを搬入する必要があります。そのため、作業時間・作業人数・階段作業・搬入経路によって、引越し料金に影響する場合があります。具体的な追加料金は引越し会社によって異なるため、「4階なら必ずいくら」とは言い切れません。見積もりを依頼する際は、必ず「エレベーターなし〇階」であることを伝えるようにしてください。
大型家具・家電は階段幅と踊り場も確認
大型冷蔵庫・ドラム式洗濯機・ソファ・ベッド・大型テレビ・タンスなどは、特に注意が必要です。エレベーターがなくても、階段が広ければ搬入できる場合があります。逆に、階段が狭い、踊り場が小さい、曲がり角が急、天井が低いといった条件が重なると、搬入できないこともあります。玄関のサイズだけでなく、建物入口から部屋までの搬入経路全体を確認しておくことが大切です。搬入できない場合、吊り上げなどの特殊作業が必要になる可能性もあります。
退去時にも同じ問題がある
入居時に家具を運び入れたら、退去時にも同じ経路で家具を運び出す必要があります。搬入の負担は入居時だけの問題ではない、という点も覚えておいてください。
子育て・けが・体調不良の場合も考えておく
子育て世帯は3階でも慎重に
ベビーカー・子ども・買い物袋を同時に運ぶ場面が出てくることがあります。子どもが寝てしまった場合は、抱っこしたまま階段を上ることもあるでしょう。ベビーカーを1階の共用部に置けるとは限りません。消防・管理規約上、共用廊下や階段への私物放置が禁止されている建物も多いため、子育ての予定があるなら、今問題がなくても将来の生活まで想像しておくことをおすすめします。
若くても「けが・病気」は考えておく
20代・30代であっても、骨折・捻挫・ぎっくり腰・手術・発熱・妊娠などで、一時的に階段が大きな負担になることがあります。「今なら階段を余裕で上れる」ということだけで判断しないほうがよいでしょう。ただし、こうした一時的なリスクだけを過度に強調して、4階全般が危険であるかのように捉える必要はありません。
ネットスーパー・宅配を使えば負担は軽減できる
現代的な生活スタイルとして、ネットスーパー・Amazonなどの通販・食材宅配・水の定期配送などを活用すれば、重い荷物を自分で運ぶ回数を減らすことができます。そのため、エレベーターなしの上階でも、以前より生活しやすくなっている面があります。ただし、ゴミ出し・外出・忘れ物・旅行・引越しといった場面での階段の負担は残ります。
エレベーターなし物件のメリット・向いている人
メリット
- 共益費が安い(最大のメリットの一つ)
- 同条件でも家賃が安い場合がある
- 上階は日当たり・眺望が良い場合がある
- 最上階なら上階からの足音がない
- エレベーター待ちがない
- 階段を日常の運動として活用できる
向いている人
- 若く健康な方
- 階段が苦にならない方
- 階段の上り下りを運動として前向きに考えられる方
- 単身の方
- 荷物が少ない方
- ネットスーパーや通販を活用する方
- 共益費を抑えたい方
- 短期〜中期の居住を予定している方
- 家賃・共益費の安さを重視する方
向いていない可能性が高い人
次のような方は、より慎重に検討したほうがよい傾向があります。ただし、「該当したら絶対にやめるべき」というわけではなく、あくまで検討材料の一つです。
- 足腰に不安がある方
- 高齢の方
- 小さな子どもがいる、またはその予定がある方
- ベビーカーを利用する方
- 重い荷物をよく運ぶ方
- ペットを抱えて移動する必要がある方
- 長期間の居住を予定している方
- 大型家具家電が多い方
- 階段そのものが苦手な方
内見時に必ず確認したいポイント
必ず自分で階段を上り下りする
エレベーターなし物件は、写真や間取り図だけでは実際の負担が分かりません。必ず、1階から実際の部屋まで自分で階段を上ってみてください。可能であれば、一度下まで降りて、もう一度上ってみることをおすすめします。1回だけなら問題なく感じても、往復すると印象が変わることがあります。内見時のチェックポイント全般については、以下の記事も参考にしてください。
同じ4階でも負担は違う
「4階」という数字だけで判断しないことが大切です。次のような点を確認しておくと、実際の負担をより正確に把握できます。
- 階段の勾配
- 段差の大きさ
- 手すりの有無
- 階段の幅
- 踊り場の広さ
- 屋内階段か屋外階段か
- 雨に濡れる構造かどうか
- 駐車場から階段までの距離
- 建物入口から階段までの距離
緩やかな階段の4階と、急で狭い階段の4階では、負担がまったく異なります。
小規模な木造アパートは、比較的新しい物件であっても、階段の踏み面(足を乗せる部分の奥行き)が狭く、勾配が急になっていることが多くあります。敷地が限られている土地に建てられているため、階段部分に十分なスペースを確保しづらいことが背景にあります。私自身、内見の案内中にこうした階段で足を踏み外しそうになったことが何度かあり、手すりを持ちながら注意して上り下りする必要があると感じています。築年数だけでなく、実際に階段を上ってみて踏み面の広さや勾配を確認することをおすすめします。
家賃・共益費の安さと階段の負担を比較して判断する
最終的な判断は、費用差と生活負担のバランスで考えます。例えば、次のような2つの物件を比較してみます。
この場合、月々の差は7,000円、年間では84,000円になります。単純に「エレベーターなしはやめる」と決めるのではなく、この差額を、毎日の階段を許容する対価として安いと考えられるかどうかで判断することが大切です。
まとめ
- 多くの人が現実的に検討しやすいのは3階程度まで。4階以上は生活スタイルによって評価が変わる
- 名古屋には2000年前後築の4階建て・エレベーターなし物件が比較的多く、近年の物件はエレベーター付きが増えている
- 5階建て・エレベーターなしは名古屋ではかなり少なく、直ちに違法というわけでもない
- エレベーターなし物件は共益費が安く設定される傾向があり、年間・複数年で見ると差が大きい
- 買い物・ゴミ出し・忘れ物・引越し・子育て・けがなど、日常の負担は具体的に想像しておく必要がある
- 内見時は必ず自分で階段を上り下りし、費用差と生活負担のバランスで判断する
当社としても、エレベーターなし物件は家賃・共益費を抑えたい方にとって有力な選択肢の一つだと考えています。物件ごとに階段の構造や搬入経路は異なりますので、気になる物件があれば、実際の階段の様子や周辺環境について、お気軽にご相談ください。
