結論から言うと、新堀川沿いの物件では基本的に匂いがあります。私は20年以上前から新堀川周辺の物件を見てきましたが、匂いの傾向は当時とほとんど変わっていません。磯臭さやどぶ臭さを感じる場面が多く、特に気温が高い日や大雨の後は強くなる傾向があります。ただし、川から50mほど離れると気にならなくなるケースが多く、名古屋市による水質改善の取り組みも進んでいます。この記事では、新堀川沿いの物件を検討する際に現地で確認すべきポイントを、宅地建物取引士としての実務経験をもとに解説します。

最終更新日:2026年7月29日
新堀川沿いは本当に匂うのか|結論
- 基本的に匂いはある。20〜30年前と比べても大きな変化はない
- 磯臭さ、どぶ臭さを感じることが多い
- 気温が高い日や大雨の後は特に強くなる
- 川から50mほど離れると気にならなくなることが多い
私は、新堀川沿いの物件のご案内をすることも多いのですが、匂いについては昔から変わらない印象を持っています。2026年7月下旬に新堀川の宇津木橋付近を通った際も、以前と同様に匂いを感じました。特に気温が高い日は匂いが強くなる傾向があります。
なぜ新堀川は匂うのか
匂いの原因を理解しておくと、内見時にどこを確認すればよいかが見えてきます。
磯臭さ・どぶ臭さの正体
新堀川は勾配がほとんどなく、水が滞留しやすい構造になっています。潮の影響を受けやすいため、上層の淡水と下層の海水が分かれやすく、川底付近に酸素の少ない海水がたまりやすいという特徴があります。名古屋市の調査では、こうした酸欠状態の堆積物から硫化水素などが発生することが、悪臭や白濁の一因とされています。硫化水素特有の匂いが、磯臭さやどぶ臭さとして感じられる原因の一つです。
気温や天候で匂いが強まる条件
気温が高い日や大雨が降った後は、匂いが強く感じられることが多いです。気温が上がると水中の分解が進みやすくなり、匂いの原因物質が発生しやすくなります。大雨の際は、後述する合流式下水道の仕組みにより、汚れを含んだ雨水が川へ流れ込むことも一因です。
名古屋市が進める新堀川の水質・臭気対策
新堀川の匂いについては、名古屋市が複数の対策を並行して進めています。これだけの対策が長期にわたって講じられているという事実自体、裏を返せば匂いの問題がそれだけ根深く、一朝一夕には解決しないことの表れとも言えます。内見時に周辺状況を確認する際の参考にしてください。
環境井戸による地下水導水(2026年7月完成)
2026年7月、舞鶴橋・記念橋・富士見橋・法螺貝橋の周辺に整備されていた環境井戸4か所が完成し、新堀川への地下水導水が始まりました。4か所合計で毎分約1,300リットルの地下水を川へ流す仕組みです。地下水を蛇行させながら落下させる水路を通すことで空気に触れさせ、酸素を含ませたうえで川底付近へ送り込みます。ヘドロを一時的に取り除くだけの対策ではなく、水が滞留しにくい状態を人工的につくる取り組みです。
雨水滞水池の整備
新堀川流域の多くは、雨水と生活排水を同じ管で流す合流式下水道です。強い雨が降ると、処理しきれない汚水を含んだ雨水の一部が川へ流れ込むことがあります。そこで、特に汚れが多い降り始めの雨水を一時的にため、雨がやんだ後に処理する雨水滞水池の整備が進められています。匂いを直接消す設備ではありませんが、川へ流入する有機物を減らし、ヘドロや酸素不足の原因を抑える効果が期待されています。
下水処理能力・合流式下水道の改善
名古屋市は、雨天時の簡易処理を高度化する設備や、雨水吐きからのごみ流出を防ぐ装置、ポンプ所のスクリーンを細かくする改修、新堀川上流部の雨水幹線整備、一部地域での雨水管と汚水管の分流化などを継続して進めています。名古屋市上下水道局によると、合流式下水道からの雨天時放流水については、2023年度末に国の基準を達成しています。市はさらに高い水質を目指し、追加の整備を進める方針です。
ヘドロの浚渫
新堀川では、川底に堆積したヘドロの浚渫も行われてきました。名古屋市の調査では、川底の堆積物が酸素のない状態になると硫化物が生成され、硫化水素臭の原因になることが確認されています。2024年3月に策定された浄化方針でも、川底の状態を確認し、必要に応じて浚渫を実施する方針が示されています。ただし浚渫は一度行えば終わる対策ではなく、上流から新たな有機物が流れ込めば再び堆積するため、下水対策や水量確保と組み合わせる必要があるとされています。
堀川など他水域からの追加導水の検討
環境井戸だけでは十分な水量を確保できない可能性もあるため、名古屋市は堀川など別の水域から新堀川へ水を導く方法も検討しています。2024年3月の方針では、地下水の活用、工場冷却水などの活用、堀川その他の水域からの導水、河川・施設の継続的なモニタリングを進める方向が示されています。堀川からの本格的な導水については、現時点で実施が決定しているわけではなく、中長期的な調査・検討の段階です。
▶ 参考:新堀川の浄化(名古屋市公式ウェブサイト)
これらの対策はいずれも進行中の取り組みであり、匂いが短期間で完全になくなるものではありません。内見の際は、現在の状況を自分の目と鼻で確認することが欠かせません。
内見で確認すべきポイント
新堀川沿いの物件を検討する際は、次のポイントを現地で確認しておくと、入居後の後悔を防ぎやすくなります。
川からの距離の目安
私の経験上、川から50mほど離れると匂いが気にならなくなるケースが多いです。ただし、風向きや当日の気温、川の流れによって感じ方は変わるため、あくまで目安として捉えてください。地図上の距離だけで判断せず、実際に現地を歩いて確認することをおすすめします。
部屋の向き・階数・窓の位置による違い
同じ川沿いの建物でも、部屋によって匂いの感じ方は異なります。川に面したベランダ側の部屋は匂いを感じやすく、反対向きの部屋では軽減されることがあります。階数が上がるほど匂いが薄まる傾向もありますが、風の通り道によっては高層階でも匂いを感じる場合があります。換気口の位置が川側を向いていないかどうかも、あわせて確認しておきたいポイントです。窓の気密性が高い物件は、外の匂いが室内に入りにくい傾向があります。
室内の匂いもチェックする
内見では、外の匂いだけでなく室内の匂いも必ず確認してください。窓を閉めた状態と開けた状態の両方で、室内にどの程度匂いが入り込むかを比較すると判断がしやすくなります。
川沿い物件のメリットと注意点
匂いというマイナス要因がある一方で、新堀川沿いの物件には価格面でのメリットもあります。
賃料が安く設定されやすい理由
新堀川沿いの物件は、同じエリア・条件の物件と比べて賃料が安く設定されている傾向があります。上前津駅から徒歩5分という利便性の高い立地であっても、川沿いというだけで賃料が抑えられているケースは珍しくありません。周辺環境の要因で賃料が下がる仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
匂いに敏感な人・窓を開けて生活したい人への注意
匂いに敏感な方や、日常的に窓を開けて過ごしたい方には、新堀川沿いの物件はおすすめしません。逆に、賃料の安さを優先したい方や、日中はほとんど窓を閉めて過ごすライフスタイルの方であれば、選択肢として検討する価値があります。
まとめ
- 新堀川沿いは基本的に匂いがあり、20〜30年前と比べても大きな変化はない
- 匂いの主な原因は、川底に堆積した有機物から発生する硫化水素などとされている
- 名古屋市は環境井戸による地下水導水(2026年7月完成)をはじめ、複数の対策を並行して進めている
- 川から50mほど離れると匂いが気にならなくなることが多い
- 同じ川沿いでも部屋の向き・階数・窓の位置によって匂いの感じ方は異なる
- 川沿いの物件は賃料が安く設定されやすい
- 匂いに敏感な人や窓を開けて生活したい人にはおすすめしない
