「気に入った物件が複数あるけれど、審査に落ちたときのために、もう1件も申し込んでおきたい」——お部屋探しではよくある悩みです。実際、審査への不安から仮押さえ目的で複数の申込を検討する方は増えています。
この記事では、賃貸の複数申込・二重申込の定義から、異なる物件への同時申込と同じ物件への複数申込の違い、不動産会社が複数申込を禁止する理由、審査への影響、そして法律上の扱いまでを、賃貸仲介の実務目線で解説します。

最終更新日:2026年7月10日
賃貸の複数申込・二重申込とは
賃貸の複数申込とは、1人の申込者が2つ以上の物件に対して同時に入居申込を行うことです。このうち、同じ物件に対して複数の窓口(不動産会社)から申込を入れてしまう状態を、特に「二重申込」と呼びます。
私の実務上の経験においても、「二つの物件に申込できますか」と聞かれることは珍しくありません。理由として多いのは、複数の物件で迷っているものの、他の人に先に申し込まれてしまう前にとりあえず押さえておきたいという考えです。また、フリーランスや転職直後の方など、審査に自信が持てない場合に「1件がダメだったときの保険として、もう1件も仮に押さえておきたい」という相談を受けることもあります。気持ちは理解できますが、この「仮押さえ目的の申込」には、後述するとおりいくつかの誤解と注意点があります。
実際の接客の場面でも、「気に入った物件が2つあるので、両方に申込をして両方とも押さえておくことはできますか」という聞かれ方をすることが多く、特に内見した2件のどちらも甲乙つけがたく決めきれないときに出てくる質問です。結論からいうと、両方を同時に確保することは基本的にできません。理由は、この後の各項目で詳しく解説します。
複数申込には、大きく分けて2つのパターンがあります。
- 異なる複数物件への同時申込:物件Aと物件Bという別々の物件に、それぞれ申込を入れるケース
- 同じ物件への複数申込(二重申込):同じ物件Aに対して、複数の不動産会社を経由して申込を入れてしまうケース
この2つはリスクの性質が異なるため、次の項目からそれぞれ分けて解説します。
賃貸の申込とは?必要書類・流れ・キャンセルできるかをわかりやすく解説
異なる複数物件に同時に申し込むケース
物件Aと物件Bという、別々の物件にそれぞれ申込を入れるケースです。管理会社や保証会社が異なっていれば、他方の物件へ申込していることが相手側に伝わることは基本的にありません。
ただし、これは「バレないから問題ない」という意味ではありません。まともな不動産会社であれば、複数物件への同時申込の意向を伝えた時点で断られるのが通常です。管理会社や貸主にとって、申込は「この物件に入居する意思がある」ことを前提とした手続きだからです。仮押さえのつもりで申込をされてしまうと、他の入居希望者を断ったり、募集を止めたりといった対応をしたにもかかわらず、結果的にキャンセルされるリスクを抱えることになります。
「バレないから大丈夫」ではなく、そもそも申込という手続きの前提に反する行為だと理解しておくことが大切です。当社では、複数物件への同時申込を希望されるお客様には、その旨を正直にお伝えしたうえで、1件に絞ってから申込むようご案内しています。
同じ物件を複数の不動産会社から申し込むケース
同じ物件を、A社とB社という異なる不動産会社経由でそれぞれ申込んでしまうケースです。これが本来の意味での「二重申込」にあたります。
この場合、管理会社や貸主から見れば「同じ人物から2件の申込が来ている」状態になるため、どちらかに絞るよう確認の連絡が入ります。その際、なぜ2社から申込んだのか理由を求められることもあります。審査上あまり良い印象を持たれるものではなく、対応次第では管理会社や貸主からの信頼を損ねる原因にもなります。
同じ物件が複数の不動産会社サイトに掲載されているのは珍しくありませんが、問い合わせは複数社にしても、実際に申込を入れる段階では1社に絞る必要があります。この仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
同じ賃貸物件を複数の不動産会社が掲載している理由|条件の違いも仲介業者が解説
賃貸物件は申込だけで仮押さえできるのか
「申込をしておけば、とりあえず部屋を仮に押さえられる」と考える方は少なくありませんが、これは実務上の感覚とは少し異なります。
申込を行うと、必要事項の入力と必要書類の提出が完了した時点で、そのまま入居審査に進みます。申込が1番手であれば、その間は他の申込者に先を越されない状態にはなりますが、これは「仮押さえ」というより「審査の順番を確保した」状態に近いものです。申込後すぐに審査が始まるため、「結論を出すまでしばらく仮で置いておく」という猶予のある使い方は、基本的にはできません。
申込は「入居する意思がある」ことを前提に受け付けられる手続きです。結論を先延ばしにするための仮押さえとして使うと、管理会社や貸主との間でトラブルの原因になります。
なお、すでに1番手の申込が入っている物件に対して、次の候補として申込む「2番手申込」という仕組みもあります。これは複数申込とは異なり、1つの物件に対して順番を確保する正式な手続きです。詳しくは以下の記事で解説しています。
不動産会社や管理会社が複数申込を禁止する理由
複数申込がなぜ嫌がられるのか、実務の視点から整理します。
申込は「契約する意思がある」ことが前提だから
申込という手続きは、審査に通れば契約する意思があることを前提に行われます。仮押さえのつもりで複数の申込を並行させると、結果的にどちらかは必ずキャンセルすることになり、この前提が崩れてしまいます。
不動産会社側もキャンセルを避けたいから
不動産会社としても、審査後のキャンセルはできる限り避けたい事態です。理由のないキャンセルが続くと、その申込者だけでなく、間に入っている仲介会社自身の信用にも影響します。タイミングや回数によっては、管理会社や貸主から「この仲介会社からの申込は受け付けにくい」と判断され、以後の取引がしづらくなる可能性もあります。
管理会社側の事務負担と機会損失が発生するから
管理会社は申込を受けると、審査への回付や貸主への確認など、契約に向けた事務手続きを進めます。ここでキャンセルになると、それまでの手続きがすべて無駄になるだけでなく、審査や事務対応にかかっていた期間、他の入居希望者への募集が止まっていたことになり、貸主にとって機会損失が発生します。この点は、貸主・管理会社にとって複数申込を歓迎できない大きな理由です。
複数申込は不動産会社や管理会社にバレるのか
結論から言うと、同じ管理会社や同じ保証会社の物件は、複数申込が発覚することが多いです。申込情報には氏名や生年月日、勤務先といった個人情報が含まれるため、同一人物からの申込が重なっていれば、管理会社や保証会社の側で気づかれます。
発覚した段階で、「どちらの申込を優先するか」の確認が入るのが一般的です。ただし、人気物件の場合はその時点で心証が悪くなり、そのまま審査NGとなってしまうケースもあります。
仲介会社同士で申込情報を共有しているのか
「複数の仲介会社を使えば、お互いに情報が漏れるのでは」と心配される方もいますが、仲介会社同士が申込者の情報を横断的に共有している仕組みはありません。複数申込が発覚するのは、あくまで申込の先にある管理会社や保証会社が同一だった場合に限られます。逆にいえば、管理会社・保証会社が異なる別々の物件であれば、複数申込していることが相手に伝わることは基本的にないということです。
複数申込が入居審査に与える影響
管理会社や保証会社が異なる物件同士であれば、複数申込をしていること自体が審査結果に直接影響する可能性は高くありません。それぞれの審査は基本的に独立して行われます。
管理会社によっては申込時に、入居意思があることが前提での申込という規約があることがあり、複数申込は入居意思が固まっていないのに申込をしたとみなされ、その時点で審査NGとする厳しい対応を取る会社もあります。背景には、「申込段階のルールすら守れない人は、入居後も規約違反やトラブルを起こしやすいのではないか」という考え方があり、これが審査NGという判断につながっている面があります。「バレても確認されるだけだろう」と軽く考えず、同じ物件・同じ管理会社への複数申込は避けるべきです。
複数申込を勧める不動産会社は要注意
中には、審査対策として複数申込を勧めてくる不動産会社も存在します。しかし、これは通常の不動産会社の対応としてはあり得ません。
複数申込を勧めるということは、管理会社や貸主側にかかる迷惑を考慮していないということです。売上を優先し、ルール違反であっても平気で行う会社である可能性が高いといえます。こうした会社を利用すると、結果的に自分自身が管理会社や貸主からの心証を悪くし、不利な立場に置かれることにもなりかねません。
「とりあえず申込だけしておきましょう」と急かしてくる会社の中には、まず申込をさせて顧客を囲い込みたいという意図があるケースもあります。複数申込を安易に勧めてくる会社の利用は避けることをおすすめします。
複数の物件に同時申込することは法律上問題があるのか
複数の物件へ同時に申込すること自体を直接禁止する法律はありません。宅地建物取引業法をはじめとする関連法令にも、複数申込を明確に禁止する規定は見当たりません。
ただし、法律上問題がないことと、実務上問題がないことは別の話です。前述のとおり、申込は「契約する意思がある」ことを前提とした手続きであり、複数申込は多くの不動産会社・管理会社が独自のルールとして禁止、または実質的に断っています。法律違反にはあたらなくても、業界の商慣習やマナーとして避けるべき行為だと理解しておくのが実務上は正確な認識です。
「違法ではない」と「問題ない」は同じ意味ではありません。複数申込は、法律上のペナルティよりも、不動産会社・管理会社・貸主との信頼関係を損なうリスクという形で影響してくる点に注意しましょう。
複数申込はしないほうがよい
ここまで見てきたとおり、複数申込は法律違反ではないものの、審査への悪影響や関係者への迷惑につながる行為です。基本的には行わないほうがよいというのが、実務上の結論です。
それでも「他に気になる物件が出てきた」という状況は起こり得ます。その場合は、新しい物件へ申込む前に、先に申込んでいる物件のキャンセルを済ませてから進めるのが正しい順序です。契約前であればキャンセルによる費用は発生しないため、両方に申込を残したまま並行させるのではなく、意向が固まった時点で一方をきちんと取り下げましょう。
よくある質問
まとめ
- 複数申込には「異なる物件への同時申込」と「同じ物件への二重申込」の2パターンがある
- 申込は「契約する意思がある」ことが前提であり、仮押さえとして使うことは基本的にできない
- 同じ管理会社・保証会社が絡む複数申込は発覚しやすく、審査NGとなることもある
- 仲介会社同士が申込者情報を共有する仕組みはない
- 複数申込を勧めてくる不動産会社は、利用を避けたほうがよい
- 法律上の禁止規定はないが、業界のルールやマナーとして避けるべき行為
- 他の物件に申込みたい場合は、先に申込んでいる物件をキャンセルしてから進める
