お客様から内見は一人でできるのかというご質問をいただくことがあります。
結論から申し上げると、現在の賃貸物件ではセルフ内見ができるケースはほとんどありません。
一部のスマートロック導入物件などでは例外的に可能な場合もありますが、多くの物件では管理上や防犯上の理由から認められていないのが実情です。
インターネット上ではセルフ内見が増えているという情報も見られますが、これはコロナ禍当時の状況を前提としたものが多く、現在の実態とは異なるケースが少なくありません。
また、セルフ内見は一見便利に思えますが、設備トラブルや防犯リスク、責任の所在の問題など、不動産会社や貸主にとって大きなリスクがあるため、現場では慎重に扱われています。
なお、セルフ内見の代わりに、現地待ち合わせで内見を行う方法であれば、不動産会社へ来店する手間を省きつつ、スタッフの説明を受けながら安心して内見を行うことが可能です。
本記事では、セルフ内見ができない理由や実際のリスク、不動産会社からセルフ内見を勧められた場合の注意点に加え、現地待ち合わせでの内見方法についても、実務の観点からわかりやすく解説します。

内見は一人でできる?(セルフ内見の可否)
内見を不動産会社のスタッフが立ち会わず、お客様だけで行いたいというご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げると、現在の賃貸物件ではセルフ内見ができるケースはほとんどありません。
マチラボでご紹介している物件についても、セルフ内見が可能な物件は取り扱いがありません。
その理由は、単に「慣習だから」ではなく、管理上のリスクが大きいためです。
具体的には、
・鍵の紛失や複製リスク
・室内設備の破損や無断使用(通水・通電・喫煙など)
・第三者の立ち入りや長時間滞在
・退去直後の原状回復前の状態でのトラブル
といった問題が発生する可能性があり、管理会社や貸主側が責任を負いきれないためです。
また、多くの物件では共用部のオートロックやエントランスのセキュリティも含めて管理されており、鍵の受け渡しや入館方法を個別に開放すること自体が難しい構造になっています。
一部では、スマートロックやキーボックスを利用したセルフ内見が導入されている物件も存在しますが、
・大手管理会社が一括管理している物件
・新築や空室期間が長い物件
などに限られる傾向があり、一般的な賃貸市場ではまだ例外的な運用にとどまっています。
このように、制度的にも運用的にもセルフ内見は制約が多く、現時点では「基本的にはできないもの」と考えておくのが現実的です。
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セルフ内見ができる物件はどのような物件か
セルフ内見は、コロナ禍において非対面での内見方法として一気に広がり、一時的には対応可能な物件が増加しました。
当時は、
・接触機会を減らす
・短時間で複数物件を見られる
といったメリットから、導入を進める管理会社も見られました。
実際に、2020年前後にはセルフ内見サービスや専用サイトが登場し、一定数の物件が対応していた時期もあります。
しかし現在は状況が変わり、セルフ内見に対応している物件は大幅に減少しています。
なお、インターネット上では「セルフ内見が増えている」「主流になりつつある」といった内容の記事も見られますが、
これらはコロナ禍当時の状況を前提とした古い情報であるケースが多く、現在の実態とは乖離があります。
現在の対応状況
ごく一部ではありますが、
・一部の大手管理会社が管理する物件
・スマートロックや電子キーを導入している物件
・専用のセルフ内見システムを採用している物件
といった条件を満たす場合に限り、セルフ内見が可能なケースもあります。
ただし、これはあくまで例外的なケースであり、
実際にはほとんどの物件でセルフ内見はできないと考えておくのが現実的です。

なぜセルフ内見ができないのか
セルフ内見では、不動産会社や管理会社の立ち会いがないため、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
主なリスクは、設備上のリスクと防犯上のリスクの2つに分けられます。
設備上のリスク
設備上のリスクとして、セルフ内見では利用者の行動を管理することができないため、室内の状態が悪化するトラブルが発生しやすくなります。
セルフ内見で実際に起きた問題としては、次のようなものがあります。
・内見後に窓を開けたまま退室してしまい、雨風が室内に入り込む
・本来使用が認められていないにもかかわらず、トイレなどの設備を使用してしまう
・土足のまま室内に入ってしまい、床を傷つけたり汚してしまう
・室内で喫煙され、においやヤニが残ってしまう
・設備や内装を破損してしまう
・案内用のカギを紛失
これらのトラブルは、室内の状態悪化や修繕費用の発生につながるだけでなく、次の入居募集にも影響する可能性があります。
また、誰が原因か特定しにくいという点も大きな問題であり、管理会社や貸主にとって大きなリスクとなります。
防犯上のリスク
セルフ内見が認められない大きな理由の一つが、防犯上の重大なリスクがあるためです。
セルフ内見では鍵の受け渡し方法や入室方法によっては第三者でも物件内に侵入できてしまう可能性があります。
例えばオートロック付きのマンションであっても内見用の鍵や解錠方法が共有されることで本来入ることができないはずの共用部や建物内に第三者が侵入するリスクがあります。
またセルフ内見は立ち会いがないため内見者の行動を監視や制御することができません。
その結果以下のようなリスクが現実的に発生します。
・内見後にそのまま室内に残り夜間に滞在される。
・不審者が建物内に侵入し他の入居者の安全が脅かされる。
・空室が不正利用され仮眠や待機場所として使われる。
さらに深刻なのが盗聴や盗撮といった犯罪リスクです。
セルフ内見では室内に自由に出入りできるため盗聴器や小型カメラを設置される可能性を完全に排除できません。
一度このような機器が設置されてしまうと次に入居する方のプライバシーや安全が著しく侵害されるおそれがあります。
このような防犯リスクは単なる設備の損傷とは異なり入居者の安全や信頼に直結する重大な問題です。
そのため多くの管理会社や貸主はセルフ内見について慎重または禁止としているケースがほとんどです。
不動産会社からセルフ内見をしてと言われたら
不動産会社のスタッフが同行せず、セルフ内見をしてほしいと言われた場合、主に次の2つのパターンが考えられます。
セルフ内見が正式に認められているケース
一つ目は、物件自体がセルフ内見に対応しているケースです。
例えば、問い合わせをした不動産会社が物件の管理会社であり、建物にスマートロックや入退室管理システムが導入されている場合です。
このような物件では、事前に内見者の情報登録や本人確認が行われ、入退室の履歴も管理されているため、一定の安全性が確保されています。
そのため、ルールに従って利用する限りは、セルフ内見が可能となっている場合があります。
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不動産会社側の都合でセルフ内見をさせるケース
もう一つは、不動産会社側の都合でセルフ内見を案内しているケースです。
これは人手不足や業務効率の都合により、本来立ち会うべき内見を省略している状態です。
昔から一部の不動産会社においては、鍵だけ渡して自由に見てきてほしいと案内するケースがありました。
このような行為は業界用語で「飛ばし」と呼ばれることがあり、管理会社や貸主側から禁止されています。
なぜなら、入室管理ができず、防犯上や設備上のリスクが高くなるうえ、トラブル発生時の責任の所在が不明確になるためです。
また、鍵の紛失や室内トラブルが発生した場合には、不動産会社だけでなく貸主側にも損害が及ぶ可能性があります。
そのため、このような方法で内見を案内する不動産会社は、管理体制やコンプライアンスの面で問題がある可能性が高いです。
このような不動産会社を利用するのは避けたほうがいいでしょう。
特に希望していないのにセルフ内見を勧められたら要注意
ご自身からセルフ内見を希望していないにもかかわらず、不動産会社からセルフ内見を勧められた場合は注意が必要です。
このようなケースの多くは、不動産会社側の都合によるものです。
人手不足や業務効率の観点から、本来立ち会うべき内見を省略している可能性があります。
また、仮にセルフ内見が可能な物件であったとしても、顧客対応として適切とはいえません。
現地では設備の使い方や注意点、契約条件に関する疑問が出てくることが一般的ですが、セルフ内見ではその場で確認することができません。
さらに、その物件を気に入った場合でも、その場で申込や具体的な手続きを進めることができず、後から不動産会社へ来店する必要があるなど、余計な手間が発生します。
セルフ内見を一方的に勧める対応は、利用者の利便性よりも不動産会社側の都合が優先されていると考えられ、このような対応をする不動産会社の利用は慎重に検討すべきです。
また、たとえセルフ内見が可能な物件であっても、希望していないにもかかわらずそれを前提に案内される場合は、その物件を管理する管理会社の物件の管理体制や対応方針に疑問が残るため、物件選びの段階で見直すことも選択肢の一つです。
現地待ち合わせでの内見という選択肢
セルフ内見ではありませんが、現地待ち合わせで内見を行う方法であれば、セルフ内見に近い利便性を確保しつつ、安心して物件を確認することができます。
現地待ち合わせとは、不動産会社のスタッフと物件の前で直接待ち合わせを行い、その場で内見を実施する方法です。
この方法であれば、不動産会社へ来店する必要がなく、ご希望の時間に合わせてスムーズに内見を行うことができます。
また、スタッフが同行するため、設備の使い方や注意点、契約条件などについて、その場で質問や確認ができる点も大きなメリットです。
物件を気に入った場合には、その場で申込や手続きの案内を受けることができるため、後から改めて来店する必要がなく、効率的にお部屋探しを進めることができます。
セルフ内見は一見便利に思えますが、実際には確認できない点が多く、結果として二度手間になるケースも少なくありません。
その点、現地待ち合わせでの内見であれば、利便性と安全性の両方を確保しながら、無駄なく物件選びを進めることが可能です。
なお、マチラボでも現地待ち合わせでの内見に対応しております。
ご来店が難しい場合でも柔軟にご案内が可能ですので、お気軽にご相談ください。
まとめ
セルフ内見は一見便利に見える仕組みですが、現在の賃貸市場においては例外的な対応であり、ほとんどの物件では認められていません。
その理由は、設備トラブルや防犯リスク、そしてトラブル発生時の責任の所在が不明確になるといった問題があるためです。
また、不動産会社からセルフ内見を勧められた場合は、その物件が正式にセルフ内見に対応しているのか、それとも不動産会社側の都合によるものなのかを見極めることが重要です。
特に、希望していないにもかかわらずセルフ内見を前提とした案内をされる場合は、対応体制や管理状況に注意が必要です。
一方で、現地待ち合わせでの内見であれば、不動産会社へ来店する手間を省きながら、スタッフの説明を受けて安心して物件を確認することができます。
効率よく物件を探したい場合は、セルフ内見ではなく、立ち会いによる内見や現地待ち合わせでの内見を活用することをおすすめします。
執筆者
株式会社マチラボ 代表取締役
1級FP技能士・宅地建物取引士・マンション管理士・賃貸不動産経営管理士
これまで1,000件以上のお部屋探しをサポートしてきた賃貸仲介の実務経験をもとに、賃貸契約や初期費用、退去費用など賃貸に関する情報をわかりやすく解説しています。
1級ファイナンシャルプランナーおよび宅地建物取引士としての知識を活かし、家賃だけでなく初期費用や更新費用、退去費用なども含めた「総合的な住居コスト」を意識したお部屋探しのアドバイスを行っています。
また、名古屋出身で名古屋の賃貸市場やエリア特性にも精通しており、地域事情を踏まえた現実的で正確な情報提供を心がけています。
